今回はファンからも高い評価を受けたタイトル『ディシディアファイナルファンタジー(DFF)』の世界観と物語について詳しく解説します。今回は【序章~3章】の解説です。
この作品には歴代ファイナルファンタジーシリーズの戦士たちが登場し,壮大な神々の戦いに巻き込まれていきます。物語の核心は「調和と混沌を司る二柱の神が引き起こす闘争」と「神々に召喚された戦士たちの運命」にあります。
FFシリーズの周年を記念したタイトルですが,非常に根強い人気を誇っています。本作をプレイしたことのない方でも十分に”観て楽しめる”作品です。ぜひあなたの推しキャラクターを見つけてみてください。
1. ディシディアファイナルファンタジーとは?物語の舞台設定を解説

『ディシディアファイナルファンタジー(DFF)』シリーズはスクウェア・エニックスによって開発された3Dアクションゲームです。
本作は歴代ファイナルファンタジーのキャラクターを操作し,1 on 1のスピーディーかつド派手な戦闘が楽しめます。
シナリオ面もつくりこまれていて,各キャラクターたちのかけあいや因縁の対決など,個性がしっかりと強調されています。作中にはファンサが随所にちりばめられているので,FFファンにとっては非常に楽しめる要素が盛りだくさんです。
物語の背景
冒頭でも紹介した物語の重要な要素「神々の闘争」と「戦士たちの運命」について解説しておきましょう。
神々の闘争

物語の舞台となる世界では,調和を司る神「コスモス」と混沌を司る神「カオス」が闘争を繰り広げています。その闘争は永遠に続いており,本作では13回目の戦いが描かれています。
神々は自ら戦うのではなく,互いに異界の戦士たちを召喚して戦わせています。この戦士たちが歴代FFシリーズの登場キャラクターたちです。
異界の戦士たち

本作では総勢22名のキャラクターたちがコスモス軍とカオス軍に分かれて登場します。
タイトル | コスモスサイド | カオスサイド |
---|---|---|
FF1 | ウォーリア・オブ・ライト cv. 関智一 | ガーランド cv. 内海賢二 |
FF2 | フリオニール cv. 緑川光 | 皇帝 cv. 堀内賢雄 |
FF3 | オニオンナイト cv. 福山潤 | 暗闇の雲 cv. 池田昌子 |
FF4 | セシル・ハーヴィ cv. 程嶋しづマ | ゴルベーザ cv. 鹿賀丈史 |
FF5 | バッツ・クラウザー cv. 保志総一朗 | エクスデス cv. 石田太郎 |
FF6 | ティナ・ブランフォード cv. 福井裕佳梨 | ケフカ・パラッツォ cv. 千葉繫 |
FF7 | クラウド・ストライフ cv. 櫻井孝宏 | セフィロス cv. 森川智之 |
FF8 | スコール・レオンハート cv. 石川英郎 | アルティミシア cv. 田中敦子 |
FF9 | ジタン・トライバル cv. 朴璐美 | クジャ cv. 石田彰 |
FF10 | ティーダ cv. 森田成一 | ジェクト cv. 天田益男 |
FF11 | シャントット cv. 林原めぐみ | |
FF12 | ガブラス cv. 大塚明夫 |
かなりの豪華声優陣ですね。そして本作からキャラクターへの声あてが本格的に行われています。FF10あたりから声優を起用するようになりましたが,それ以前の作品については声があてられていませんでした。
なので,キャラクターイメージに合わせた声優が起用されました。本作からキャラクターイメージが固まったというような印象ですね。
非常に個性あふれるキャラクターばかりですので,ストーリー中のかけあいもおもしろいですよ。FFをプレイしたことがない方でも楽しめます!ぜひあなたの”推しキャラクター”を見つけてみてください。
浄化
闘争に敗れた戦士たちはどうなるのか?何故闘争は永遠に続いているのか?その背景には「浄化」と呼ばれる現象が起こっているためです。
浄化とは戦士たちの記憶と経験を失い,召喚直後の状態に戻してしまう現象のことです。実はこれが永遠の闘争を引き起こしている原因でもあります。
というのも,闘争には勝敗がつきます。敗れた軍勢は神も戦士も浄化を受けるので,自分たちが永遠の闘争に参加していることにすら気づかないのです。一方で,勝利した軍勢はその記憶や経験は保持されています。
12回目の戦い
本作は13回目の戦いが描かれていますが,実はこの戦いにはある戦士たちの意志が反映され,舞台が整えられた状態になっています。
その辺りの物語を描いているのが『ディシディアデュオデシムファイナルファンタジー(DDFF)』という同シリーズ作品です。こちらは12回目の戦いが舞台となっています。
DFFとDDFFはセットでプレイするとさらに物語を深く楽しむことができます。DDFFにはDFFのストーリーも収録されていますよ!DDFFのストーリーが気になる方はぜひこちらの解説もご覧になってください。
2. ストーリー解説
序章『最後の希望』

聖域でひとり気を失っていたウォーリア。そこに突如コスモスの声が聞こえてきた。
私は敗れたのです 世界を守れなかった
私はカオスに敗れました 混沌を司る神カオス
荒れ狂うその力は調和を引き裂き 世界はかたちを失いました
聖域の中心には力を失ったコスモスが座っていた。続けてコスモスは戦士たちにこう伝えた。




すべては混沌の渦に沈みかけています
あなたたち十人は この世界に残された最後の希望
だから手に入れてください 世界が砕けても輝きを失わない光― クリスタルを
クリスタルは絶望に立ち向かう力
十の輝きが集えば 世界を救う希望が生まれる
クリスタルへの道は険しく たどりつく方法もみな異なります
自分の道を信じて進むしかないのです
行き先の見えないひとりひとりの道を―
世界は十人の戦士たちに託された。コスモスは残った世界の崩壊を防ぐために力を使い,そして消えてしまった。個数モスの戦士たちはそれぞれクリスタルを求めて歩き始めたのだった。
1章『迷いの先に』
クラウド,セシル,ティーダ,フリオニールはクリスタルを求めて旅を続けていた。今だ手がかりすらつかめていない。戦士たちはクリスタルについて,分からないことが多かった。
それにしても,クリスタルって何なんッスかね?
クリスタルさえあれば カオスを倒せるのかな
それがコスモスの望みなら 俺たちが果たすまで

そんななか,クラウドはある疑問を抱いていた。
俺たちは何のために戦っている?
コスモスはクリスタルを集めろと言っただけだ
カオスを倒せば平和になるという保証もない
世界がどうなるかなんて誰にもわかりはしない―
俺は 納得したいんだ 何のために戦うのか
答えも見えぬまま 流されたくない
そしてクラウドはセシル,ティーダ,フリオニールに疑問を投げかけた。
おまえたちはどうなんだ?
こんな状況でも戦える理由があるなら教えてほしい
オレはオヤジとの決着だ けど それは個人的な問題だしなあ
ティーダはそれでいい
しかしセシルとフリオニールには思い当たることがなかった。
戦う理由― そんなのちゃんと考えたことなかった
少し考えさせてくれないか
俺はクラウドが納得できる答えを見つけたい
旅を進めるなか,戦う理由についてフリオニールがクラウドにこう話した。
戦う理由 しばらく考えてみた
だが 言葉にするのはなかなか難しいな
―ひとつ思いつくとしたら やはりこいつか

フリオニールの手には『のばら』が現れた。これがフリオニールの戦う理由だという。
ずっと見たかった景色があるんだ
俺はそのためにこの戦いを終わらせたい
ま 今のところ夢みたいな話だけどな
―夢を諦めたくないんだ
それがあるから 俺は戦い続けられる
それを聞いたクラウドはフリオニールにある提案をした。
フリオニール 俺と戦ってくれないか?
知りたいんだ それだけで本当に戦い続けられるのか?
夢の強さ というやつを
困惑するフリオニールだったが,クラウドの意思は固まっていた。その意思を尊重し,フリオニールは応戦する。戦いには敗れたが,夢を諦めない意思の強さにクラウドは関心していた。

戦いを通じて,クラウドは改めて戦う理由について疑問を抱いた。
探しても 見つからないんだ
夢を持たない俺は どうしたらいいと思う?
すまない 困らせるつもりはなかった
クラウドが求めた答えは,まだ見つからない。
旅のなか,セシルがクラウドのもとを訪れた。
フリオニールから答えはもらえた?
ああ― あいつには夢があるらしい
それを叶えるまであきらめず戦い続けると
フリオニールらしい答えだよね—
恥ずかしがってなかなか教えてくれなかったけど
彼はのばらの咲くいつまでも平和な世界を作りたいんだって
続けてクラウドはセシルに問いかけた。
セシルはどうだ?
僕も クラウドの望む答えはあげられそうにない
でもどこかに答えを知っている人がいるかもしれない
探しにいってみたらどう?

戸惑うクラウドだったが,そこに合流したフリオニールとティーダもクラウドの背中を押す。そしてクラウドはひとり戦う理由を求めて歩き始めた。
単身行動するクラウドの前にセフィロスが現れた。セフィロスは剣を構えるも,クラウドに戦う意思はなかった。

なぜ私と戦わない?
あんたと戦うことに何の意味がある
これ以上 意味のない戦いはしたくない
では意味さえあれば おまえは誰とでも戦うのだな?
違う 俺はただ戦いに納得できる理由が欲しいだけだ
まるで人形だな おまえに意味を与えてやろう―
セフィロスが手に持っていたのは『のばら』だった。のばらを投げ捨て,セフィロスは自分を追うようクラウドに言い,その場から去った。
セフィロスのもとにたどり着いたクラウド。そこでセフィロスは今のクラウドを哀れんだ。
追えと言われれば 素直に追ってくるのだな
流されまいとして戦う理由を求めているようだが
おまえは求めるだけで自分から見つけようとしていない
だから人から与えられた理由に喜んで飛びつくのだ
あの連中は傷つけられても
クリスタルを求め続ける意志がある
だが おまえはどうだ?
自分では何も決められない 流されるだけの人形だ
違う 俺は―
これからも私が理由を与えてやろう
おまえの望むままに
黙れ 与えられるだけの理由はもういらない
ここに来たのは 俺自身の意志だ

セフィロスとの決着をつけると,クラウドの前にはクリスタルが出現した。しかし,セフィロスはクリスタルをクラウドが見つけた絶望だといった。それはさらなる戦いに巻き込まれるという意味だった。

まだクラウドにとっての戦う理由は見つかっていない。それでもクリスタルを手にしたことで,クラウドは自分が求める答えに近づいていることを確信していた。自分自身の答えを見つけるときまで,クラウドは歩み続ける。
2章『知恵か勇気か』

ティナと共にクリスタルを探索するオニオンナイト。歩み続ける2人であったが,ティナは不安を抱いていた。
ちゃんと見つけられるのかな
もし見つけても 世界を救えなかったら——
神様ってもったいぶった言い方が好きだよね
コスモスの言葉が正しい証拠はないけど 間違ってるかどうかもわからない
とりあえず 今のところは信じて進むしかないよね
できることからやってみよう——
立ち止まっていても 答えは出ないんだ まずは動かなきゃ
安心してよ 僕が必ず正解を見つけるからさ
オニオンナイトは自信に満ちていた。自分ならクリスタルを見つけることができると。
探索を進めると,ティナが強い気配を感じ始めた。しかし気配の正体までは分からない。
なんだか心がざわついて——
近づいてはいけない気がするの
オニオンナイトは不安を抱えるティナの背中を押す。

ティナ クリスタルの手がかりが見つかるかもしれないんだよ
大丈夫 敵がいたって僕がなんとかするから
カオスの手先なんて 強い力でただ壊すだけの連中さ
それにひきかえ 僕には ココがあるからね!
ほら 先へ進もう
自分には知恵がある,そうティナに言い聞かせて気配の方へと向かう。その道中,エクスデスが2人の前に現れた。

エクスデスを目にして,オニオンナイトの心情は揺らいでいた。
”なんだ この威圧感——”
”底知れない力—— 測りきれない?”
”まともにやったら 勝ち目はない”
”ティナもいるし ここはひとまず——”
そしてオニオンナイトはエクスデスにこう話した。
み 見逃してくれませんか?
僕らの力はあなたには及びません
戦っても 退屈しのぎにすらならないでしょう
なら 他に強い相手を見つけた方が満足できるはずです
あなたが弱い者をいたぶる卑怯者なら 話は別ですけど
その場をやりすごすために働きかけるオニオンナイト。するとエクスデスから忠告ともとれるような言葉が返ってきた。
無力なものを無に還しても まさに無意味か
よかろう 見逃してやろう
だが小僧 ひとつだけ教えてやる
勇なき者に クリスタルを手にする資格はない
ちょろいもんだね
ま やりあうハメになっても適当にあしらって逃げるつもりだったけど
僕 勝てない相手とは戦わない主義なんだ
エクスデスの意外な行動にティナは不安を抱いていた。
でも いいのかな
なんだかわざと逃がしてくれたみたい
戦いを避けたあなたに助言めいたことまで
『勇なき者』って話のこと?
勝てない相手と戦うのは勇気じゃない
単に無謀で無駄なだけだよ
ごめんなさい でも——
だったら クリスタルを手に入れて証明するよ
僕が『勇なき者』じゃないって
2人は気配のもとにたどり着いた。するとティナの様子に変化が現れ始めた。ティナの体が光はじめ,力が暴走し始めたのだ。
いやっ 声が 頭に——?

力が暴走したティナはオニオンナイトに向けて魔法を放つ。戸惑うオニオンナイトは戦うことでティナを止めようと試みる。
しかしティナの力はおさまらず,突然その場から消えてしまった。その直後,暗闇の雲が現れ,オニオンナイトを哀れんだ。

邪魔をするでない 真の力が目覚めつつあるのだ
伝説のオニオンナイトか
たいそうな称号を名乗っても しょせん子供よ
誰のせいでこうなったか わからんのか
小娘の苦しみを救うどころか 剣を振るって痛めつけた人でなしは誰だ?
嫌がる娘を強引に連れてきた愚か者は どこの誰だ?
あの娘は悟っていたぞ 進んではならぬとな
すべては 己の浅知恵を過信した おまえ自身が招いたことよ
己の無知と無力を呪え おまえにあの娘は救えぬわ
歩みが止まってしまったオニオンナイト。そこへティナの心の叫びを聞いたコスモスが訪れた。オニオンナイトはすがるようにコスモスと話した。

ティナを助ける方法 コスモスなら知ってるよね?
暗闇の雲を倒すしかありません
あいつを?
でも僕は 勝てない相手とは戦わない主義だし——
そうだ クリスタル
クリスタルがあれば ティナを助けられるんじゃ
世界を救える力があるんだ あいつと戦わなくたって
ねえ もったいぶらずにクリスタルのありかを教えてよ
戦いを避けるのも ひとつの道
誰も その決断は否定はしない
でも それはあなたの本当の心?
クリスタルは決意の先に輝くもの
あなたの心にある 一番大事な想いに従えば手に入る
私に言えるのは それだけ
コスモスがそう話して立ち去った直後,ゴルベーザが現れた。そしてまるでオニオンナイトを焚きつけるように話した。

哀れだな
ティナ といったか あの娘は
術が解けぬ限り 彼女は暗闇の雲のしもべとして戦い続けるのだ
いずれ力尽き その命は戦場に散る
おまえの力では 暗闇の雲は倒せん
戦いを避けるのは 賢明な判断だ——
どうした 頭で考えた理屈に従いたくないのか
胸に問いかけ 決意するがいい
こうしてオニオンナイトは再び歩み始めたのだった。

暗闇の雲のもとへ向かうオニオンナイト。そこには気を失って倒れているティナがいた。暗闇の雲を欺き,オニオンナイトはティナを背に戦う意思を見せる。
わかったんだよ
頭で考えた理屈に縛られて 自分の心を裏切るなんて馬鹿げてるって
僕は僕の力でティナを守る
いちばん大事な僕の想いだ
勝てない相手とは戦わない この主義を変える気はないよ
でも 戦うぞって心に決めた
だから絶対 あんたに勝つ
そして激闘の末,暗闇の雲を倒したオニオンナイト。しかし,ティナはまだ気を失ったまま—。不安を覚えるオニオンナイトのもとへ再びゴルベーザが現れた。

気を失っているだけだ 急激に力を使いすぎたのだな
おまえ— ティナには指一本ふれさせない
その言葉にゴルベーザは続けて答えた。
良い決意だ 彼女を守ってやれ
彼女は強大な力を持つがゆえ 自分自身を恐れている
おまえが彼女の支えとなり 守ってやることだ
そ そんなこと言われなくたって
そうだったな おまえはもう決意している
そして クリスタルは決意の先に輝く
オニオンナイトの前にクリスタルが現れた。

クリスタルを手にしたオニオンナイト,気が付くとゴルベーザの姿はなかった。すると気を失っていたティナが意識を取り戻した。すぐにオニオンナイトが語りかける。
もう大丈夫だよ 僕が見てるから少し休んでて
僕が守るから
3章『意思が示す道』

意識を取り戻したティナはオニオンナイトとクリスタルを探し続けていた。しかしティナには気を失っていた頃の記憶はなかった。自分は何故眠っていたのか—,漠然とした不安だけがティナに残されていた。
不安な思いを抱えるティナにオニオンナイトは改めて決意を表明する。
守るから
ティナのことは僕が守る 約束するから
記憶があいまいなティナの目には,まるでオニオンナイトが急成長を遂げたように見えていたのだろう。ティナは優しく微笑んで答える。
いつのまにそんなに騎士らしくなったの?
ちょっと前まではもっと生意気だったのに
やっぱり 覚えてない?
え?
いや ならいいんだ
ほら 先を急ごう
オニオンナイトはティナの力の暴走について語ることはなかった。ティナにはあいまいな記憶,クリスタルへの道など不安は尽きなかった。
”なぜだろう 目覚めて以来”
”大事なことを忘れてしまっている気がする”
”けど それが何なのか どうしても思い出せない”
”なぜ眠っていたのかすらも”
”でも いつか取り戻せるはず”
”そうすればきっと クリスタルへの道だって——”
光明は未だ見えず—。己の無力さにティナは恐怖さえ感じていた。ティナはその思いをオニオンナイトに打ち明けた。

さっきはありがとう 私のこと 励ましてくれたんでしょ
本当はね 少し怖かったの
みんながんばっているのに 私だけ何もできていないから
まっすぐ進めない自分がもどかしくて
クリスタルを手に入れたら 私も変わるのかな
オニオンナイトはクリスタルを見せて,その思いに答えた。
そうじゃない
変わったから 手に入ったんだ
ある人が教えてくれたんだ
『クリスタルは決意の先に輝く』って
だからティナも 自分のいちばん強い気持ちに従えばいいんだよ
まだ わからないかも
でも やってみる あなたみたいに 私も
望みを捨てないで 進み続けていればきっと
すると,2人の行く手をケフカが阻んだ。ケフカはティナの破壊の力を未だ諦めていない。

力を確かめに来たんだ
やっぱりおまえはカオスに仕えた方が心地いいんじゃない?
どういう意味?
おやおや 何も覚えていない
なら教えてあげましょう
おまえはその力で大事な仲間を——
やめろ!
すかさずオニオンナイトが止めに入る。だがケフカはその後も話し続ける。
あれれ?傷つけられた本人が何言ってんの?
美しき友情なんて——やめて
ウザったらしくて 反吐が出る
それはどういうこと?まさか——
ピンポーン そのまさか
おまえはそこにいる仲間をギタギタに痛めつけたんだ
あんなに楽しそうだったのに忘れるなよ
ケフカは高笑いしながら話し続けた。
まったく危険な存在ですねぇ
戦えば戦うほど自分の力を抑えきれなくなる
力が心を超えて暴走する 破壊の化身めが——
どうした?破壊の力もっと見せちゃいなよ
敵も味方も世界もぼくちんと一緒にゼーンブ壊そう ぶっ壊そう
思わずオニオンナイトが交戦する。腹を立てたケフカが魔法を放つと,オニオンナイトとケフカはどこかへ消えてしまった。
ティナはオニオンナイトの行方を捜しに向かう。しかしティナはケフカの言葉が気にかかってしまう。
私は破壊を望んでなんかは——
その瞬間,ティナの力が暴走し始めた。力を抑えきれずに苦しむティナ。するとそこへクラウドが現れた。

また傷つけてしまうかもしれない…。ティナは不安からクラウドに警告した。
ダメ!すぐ逃げて!
クラウドは無言のまま剣を構え,交戦態勢に入った。
どうして?やめて!
しかしこれはクラウドなりの決断だった。力が落ち着いたところでクラウドはティナに話した。

大丈夫か?
どうして逃げなかったの?
苦しそうなあんたを放っては行けない
かといって 他に方法も見つからなかった
もしかして 私の力を落ち着かせるために戦ってくれたの?
悪かったな 先に言うべきだった
だが まさかここまでとはな
素直に逃げるべきだったかもな
冗談交じりに答えるクラウド。ティナはクラウドに感謝するも,クラウドはこう続けた。
礼を言われる資格はない
あんたを救える確証はなかった
本当はどうすればいいのか迷っていた
でも 助けられたのは本当のことだから
その気持ちだけは伝えたかったの
そしてティナはオニオンナイトの行方が分からなくなったことをクラウドに伝えた。事情を聴いたクラウドは協力することに。
クラウドと共に行動するティナは自分の力を恐れていた。
力が怖いの
助けに行きたいのに また力が抑えられなくなったらって思うと
誰にでも迷いはある
がむしゃらに進める奴なんて ごく一部だ

そう言ってクラウドはティナにのばらを見せた。
それは?
フリオニールの『夢』だ
『のばらの咲く世界』 それがあいつの願いらしい
あいつは—『夢があるから あきらめずに戦える』と言った
あの潔さは たまにうらやましくもなる
まっすぐで すてきだね
クラウドにはどんな夢があるの?
俺はなくしたんだ
そういうあんたは どうなんだ?
私もわからない
本当の意味での未来って考えたことなかった
先のことなんて ずっと怖いだけのものだったから
けど 今は——
迷いはあったものの,ティナのなかで心情の変化があった。
私もわからない
本当の意味での未来って考えたことなかった
先のことなんて ずっと怖いだけのものだったから
けど 今は——
ねえ 同じ夢を見るのはどうかな
同じ? のばらの咲く世界か?
うん でもそこにはのばらだけじゃない
きっと いろんな花が咲いているんだと思う
私の好きな花も あの子の好きな花も
夢の話を聞いて 私初めて思ったの
恐れるだけじゃない未来を——
そんな世界をみんなと一緒に見てみたいって
この想いがあればきっと
迷うことはあっても 心は揺るがないはず
あなたの好きな花だって きっとそこに——
そう簡単に叶う夢じゃない だが 悪くないな
2人はともに迷ってきたからこそ,励まし合うことができた。希望を胸に,2人はオニオンナイトの行方を捜す。
そこへケフカが現れた。やはり破壊の力を諦めきれないようだった。
僕と一緒に破壊を楽しむ決心はついた?
私はあなたとは違う
無理無理 偉そうなこと言ってもどうせ力に溺れ
誰かを傷つけるにきまってる
見つけたの 守りたい未来を
どんな力にのみこまれようと
私は もう何も見失わない
その決意はかえってケフカを焚きつけてしまった。突如暗闇の雲が現れ,挟撃されてしまう。そこへ行方が分からなくなっていたオニオンナイトも合流。クラウドとオニオンナイトは暗闇の雲を,ティナはケフカと交戦した。


戦いに勝利し,カオスの戦士たちを撃退した。3人が安堵していると,ティナの目の前にクリスタルが出現した。

クリスタルを手にしたことで,ティナの中で決意は確かなものとなった。
”夢なんて ほんのささいなことでもいい”
”それだけで人は強くなれる”
”その強さは また必ず——”
”新しい夢へとつながっていくから”
4章『月の導き』
セシルはティーダ,フリオニールと共に旅を続けていた。しかしクリスタルへの光明は見えず—。手がかりが見えない現状にセシルは思い悩んでいた。
”求め続ければ 手に入ると思っていた”
”だが いまだに道は見えない”
”どうすれば クリスタルは手に入る?”
”こうしている間にも 世界は——”
そこに現れたのは,ゴルベーザだった。思い悩むセシルにゴルベーザは諭すように話した。

おまえたちはクリスタルをなんだと思っているのだ?
クリスタルの輝き それは目に映るものではない
ただ求めるだけでは 一筋の光明すら見出せぬ
クリスタルの秘密—— 知りたくば我が影を追うがよい
そう話してゴルベーザはその場から立ち去った。突然のゴルベーザの接触に,駆けつけたフリオニールは警戒していた。
大丈夫か?
あいつ——カオス側についているゴルベーザだろ?
僕の——兄さんでもある
兄弟だとしても今は敵だ 何か言われたのか?
クリスタルの秘密を知っていると
知りたければ 追いかけてこいって

セシル 言いにくいことなんだが
気を許せば闇にのまれる 敵の罠かもしれない——
さっきの誘いは忘れたほうがいい
仲間が危険な目にあうのは見たくない
セシルはゴルベーザの残した言葉が気にかかっていた。思い悩んでいる様子のセシルのもとにティーダが声をかける。ティーダは『家族に会いたい』という思いを尊重した。

だったら会ってくればいいッス
ホントはセシル 後悔してんだろ?
うん 危険をおかしてまで来てくれた
兄さんの気持ちを無駄にしたようで
かっこつけんなって
ただ会いたい それで十分ッス
でも フリオニールは僕を心配して——
フリオニール 関係なし
セシルさえ無事に戻ってくれば関係なし
あいつにはうまく言っておくから ばびゅーんと行ってこいって
いいのかい?本当に?
仲間の言うことは聞くもんだろ
ありがとう すぐに戻ってくるから
必ず——約束するから
セシルはゴルベーザのもとへと向かった。ゴルベーザはクリスタルの秘密,そしてセシルにクリスタルを手にする資格があるのか見極めに来たという。2人のもとに突如エクスデスが訪れる。

まさか相手方に通じていたとはな ゴルベーザ
光に未練を残す 軟弱者め
おまえには関係あるまい
いいや 大いにある
裏切り者を断罪するのは この私なのだからな
セシルはエクスデスと対峙する。
兄さんには指一本ふれさせない
僕に資格があるかはわからない でも——
見ていてほしいんだ 僕の力を
そしてセシルはひとりで戦い,エクスデスを退けた。その様子を見たゴルベーザはある疑問を感じていた。
なぜクリスタルは現れぬ?
おまえは私の力を借りず ひとりでエクスデスに挑んだ
何事も ひとりで成し遂げる力——
強い意志を持つ者にこそクリスタルは輝く
それがクリスタルの秘密なのだ
今のおまえなら 手に入れてもいいはずだが
セシルはクリスタルを求める現状から,ある提案をした。その提案はゴルベーザを失望させることとなった。
僕は兄さんのために戦っただけだ
ねえ 一緒に行かないかい?
今の話 仲間に伝えたいんだ
みんなもクリスタルを求めているから
クリスタルがそろえば 戦いは終わる
そうすれば 兄さんとも——
もうよい
私は おまえの影
闇に染まりきれず 光にも属せぬ存在
失望したぞ セシル
おまえには 未来永劫クリスタルは輝かぬ
ゴルベーザは立ち去ってしまった。セシルにはゴルベーザの反応,クリスタルへの道,分からないことが募るばかりだった。
仲間のもとを目指すセシルだったが,その道中ゴルベーザが再び現れた。ゴルベーザはセシルに対して,苦言を呈した。
仲間に甘え すがりつく者が強い意志を持てると思っているのか?
他人を頼る者に真の輝きなど訪れはしない
誰もが己のつとめをひとりで成し遂げねばならんのだ
でも 困っている仲間を放ってはおけない
僕は みんなとクリスタルを探したいだけだ
セシルの発言に,ゴルベーザは怒りをあらわにした。

わかっただろう
他者との絆など夢幻にすぎぬ
壊れやすく 信じる価値もないということがな
ゴルベーザの言葉を受け,セシルはどうするべきなのか分からなくなってしまった。迷えるセシルのもとにコスモスが訪れる。コスモスはセシルの思いにこう答えた。

大丈夫 あなたは確実にクリスタルに近づいている
気づいているはずよ
誰かの力に頼ることと 誰かと力を合わせること
それは あなたにとって同じこと
あなたならきっと輝きにたどりつける その資格がある
コスモスはそう言い残して去っていった。しかし,迷いが払われたセシルは再びゴルベーザのもとへと向かったのだった。

仲間とともに行くと決めたセシル。その思いはゴルベーザとは相容れないものだった。セシルは自分の抱いた揺るぎない思いを証明すべく,ゴルベーザと対決する。
戦いに勝利したセシルのもとにクリスタルが現れた。自らの思いを貫いたからこそ手にしたクリスタル。そして実の兄ゴルベーザと手にしたクリスタルでもあった。

これは兆しにすぎん——
その輝き おまえはどこまで貫けるのだろうな?
そう言い残してゴルベーザは立ち去ったのだった。
どんな試練があろうと みんなと力をあわせ 立ち向かってみせる
”そして いつか兄さんとも一緒に——”
”絆は 僕を導く輝きだから”
僕は 信じ続ける