FINAL FANTASY IIは1988年にファミリーコンピュータで発売されたシリーズ第2作品目です。前作とは打って変わって,シリアス調のストーリーとなっていますが高い評価を得ています。一方で,ゲームシステムはかなり独特なもので,上級者向けとも思えるコンテンツとなっています。育成という意味ではやりこみ要素ともいえますので,難易度高めではありますが興味本位でプレイしてもらいたいですね。
『FFI』がヒットしたことで2作目が発売されたわけですが,「ファイナルなのに2作目?」当時は疑問を感じる人もいたでしょう。ですのでタイトルごとにシナリオをすみ分け,前作との差別化を計る方針となったと推察します。その影響でゲームシステムまでも一新することになったのですが…。
概要
FINAL FANTASY IIは1988年に発売され,その後さまざまなハードへの移植・リメイクが行われています。ファミコン版は国内で約76万本を売り上げ,FF黎明期でありながらも健闘しています。それまでのRPGの一般的な概念だった経験値によるレベルアップとは異なる独自の成長システムが導入されています。これにより自由度の高い育成が可能となったので,やりこみ要素となっている側面があります。このシステムそのものは継承されていませんが,”キャラクター能力の自由なカスタマイズ”という思想は後のシリーズにも形を変えながら受け継がれています。
特筆すべきはシナリオのつくりこみです。前作のような王道ファンタジーだけではありません。複雑な人間関係や命の尊さを描く色濃い人間ドラマが盛り込まれています。前作の『FFI』とは違うものにしたいという構想のもとに製作されたそうで,シナリオからシステムまで大きく変わったのでしょう。クリスタルも登場しますが,正直存在感は薄いです。今でこそ”FFの象徴”となっていますが,このイメージは次作『FFIII』以降になります。
主要人物
- フリオニール
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本作の主人公で,義を重んじるフィン王国の若者。幼いころにパラメキア帝国の襲撃を受けて,義理の両親を殺されてしまう。反乱軍に助けられたことで一命をとりとめ,幼馴染のマリアとガイと共にパラメキア帝国に立ち向かうことを決意する。
- マリア
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レオンハルトの妹でフリオニールの義妹にあたる。帝国の襲撃でレオンハルトとは生き別れてしまう。反乱軍へ加入してレオンハルトの行方を追っていく。
- ガイ
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フリオニール,マリアと共に育った無口な青年。フリオニールと共にマリア家に引き取られる前はオオカミに育てられていたため,言語がおぼつかない。
- ヨーゼフ
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反乱軍所属のガタイのいい男性。帝国に娘を捕らえられたところをフリオニール一行に助けられ,以降はその恩義に報いるべく行動している。
- スコット
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カシュオーン第1王子でゴードンの兄。帝国の襲撃に遭い,重傷を負ってしまった。ヒルダの婚約者でもあり,酒場に匿われる形で生きていた。
- ゴードン
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カシュオーン第2王子でスコットの弟。帝国に敗北し,兄と国を捨てた自分を責め続けている。旅を経て心身共に徐々に成長していく。
- レイラ
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帝国にも反乱軍にも属さない海賊の女船長。冒険者を海賊船に乗せて追いはぎしている。姉御肌な人物でおせっかい焼きなところもあるためか手下からは慕われている。
- リチャード
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ディスト王国の竜騎士で勇猛果敢な誇り高い男性。祖国が帝国に襲撃されたが,別行動していたため唯一生き残った竜騎士でもある。
- ヒルダ
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パラメキア帝国に反旗を翻す反乱軍のリーダー。フィン王国の王女だったが帝国に侵略されてしまった。平和を目指して静かに抵抗活動をしている。
- ミンウ
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ヒルダの右腕である高名な白魔導士。冷静沈着な反乱軍の参謀として行動する一方,単独で危険な任務をこなすなど頼れる存在。
- レオンハルト
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フリオニール,ガイ,マリア,と共に育った青年でマリアの兄にあたる。帝国の襲撃後,フリオニール達とは生き別れて消息不明となる。のちにレオンハルトのみ別の場所で生存していたことが判明する。
- 皇帝
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パラメキア帝国の皇帝。軍隊と魔物を使役し,世界を支配するために各国を征服する。GBA(ゲームボーイアドバンス)とPSPの移植版で描かれているサイドストーリーでは,「善なる皇帝」が存在する。
ストーリー
ゲーム開始直後,いきなり圧倒的な強敵との戦闘が始まり,手も足も出ず打ち負かされる。それもそのはずパラメキア帝国が世界の支配のため,各国へ向けて侵略しはじめていた。襲撃を受けたフリオニール達は帝国に対抗する組織「反乱軍」に救出され,ミンウの治療を受けて一命をとりとめる。一行はヒルダに掛け合って反乱軍へと加わり,帝国に立ち向かう。
戦闘システム
基本構成は前作と同様
本作も基本構成は前作と同様になります。新たな要素として,隊列の概念が採用されました。前列では与える/受けるダメージが増加します。一方で後列では敵の物理攻撃を受けませんが,弓以外では物理攻撃を当てられなくなります。そのほかはサイドビュー方式かつターン制のバトルで一見すると変化がないように思えます。ところが本作最大の特徴ともいえるゲームシステムがガラッと一新されています。できるだけわかりやすく手短にまとめてみましたので,プレイしようと考えている方はぜひ参考にしてくださいね。
自由度の高さ≒やりこみ要素 ”各種ステータスと成長システム”
本作にはキャラクターレベルの概念はなく,戦闘中の行動や受けたダメージ等によって能力が成長するシステムとなっています。もちろん戦闘不能状態だった場合はステータスが成長しません。これは他のRPG作品でも類を見ない非常に珍しいシステムになっていて,キャラクターをプレイヤー好みに成長させられるという意味では画期的なシステムです。各種ステータスの上げ方については次の通りです。
ステータス | 上げ方 |
---|---|
最大HP | 戦闘開始時よりHPが減った状態で戦闘終了。大きく減っているほど上がりやすい |
最大MP | 戦闘開始時よりMPが減った状態で戦闘終了。大きく減っているほど上がりやすい |
攻撃力 | 力を伸ばす/攻撃力の高い武器を装備 |
命中率 | 力を伸ばす/命中率の高い武器を装備 |
命中レベル | 熟練度の高い武器を装備 |
防御力 | 防御力の高い防具を装備 |
回避率 | 素早さを上げる/軽い防具を装備/回避率の高い装備 |
回避レベル | 敵の物理攻撃ターゲットになる,敵の攻撃は外れてもよい |
魔法防御 | 体力を上げる/魔力を上げる/防具を装備 |
魔法防御レベル | 敵の魔法攻撃のターゲットになる,敵の攻撃は外れてもよい |
力 | 「たたかう」を行う,複数回行うと上昇確率が上がる |
精神 | 戦闘中に白魔法を使う。使用回数が多いと上昇確率が上がる |
知性 | 戦闘中に黒魔法を使う。使用回数が多いと上昇確率が上がる |
体力 | 戦闘開始時よりもHPが減った状態で戦闘終了。大きく減っているほど上がりやすい |
素早さ | 回避確率が高い状態で戦闘 |
例えば,「たたかう」主体で戦闘すると戦士タイプ,「まほう」主体で戦闘すると魔法使いタイプのステータスに自然と成長していきます。ですので味方を殴って成長させる―なんてことも可能です。そして武具や魔法はどのキャラクターにも自由に装備させられ,成長させたいステータスに応じて組み替えられるようになっています。加えて防具には重さが設定されていて,表にあるように回避率に直結するようになっています。重い装備の方がダメージを軽減できますが,行動順が遅れたり素早さが成長しなかったりとデメリットもあります。場面に応じて使い分ける必要があります。
育成に更なる奥行き ”熟練度システム”
育成システムに紐づいた本作特有の”熟練度システム”が存在します。武器や盾,魔法に設定され,攻撃や防御に大きな効果を及ぼす要素になります。熟練度は1~16(最大)まで成長し,戦闘時に使用した回数に応じて熟練度が上がります。魔法は「○○のほん」というアイテムで入手し,使用することで習得できます。熟練度システムの関係で魔法には上位互換の概念(ケアル→ケアルラ)はなく,「ケアル 3」という形式で表示されます。そして使用回数制ではなく消費MPが設定され,熟練度に応じて効果増大と共に消費MPも増大します。なかなか初心者には難しいですが,熟練度を意識してパーティー編成すると攻略しやすくなりますよ。
合言葉は… ”ワードメモリーシステム”
本作の特徴的なシステムとして,”ワードメモリーシステム”も外せません。人々の会話で特定の言葉を覚えたり,覚えた言葉を人に尋ねたりすることができます。最も有名な言葉である「のばら」はこのシステムで最初に覚える反乱軍の合言葉です。ストーリーの関係上,街の人々も疑心暗鬼となってコミュニケーションがとれない場合があります。そこで合言葉を唱えることで意思疎通をはかるという独特な存在感が一層シナリオを引き立ててくれます。
体験談(※一部ネタバレあり)
シナリオのつくりこみが生んだ名シーン
シナリオがつくりこまれたことで本作は高い評価を受けることができました。全体的に悲壮感あふれるシナリオとなっており,さまざまなキャラとの出会い・別れが見どころです。絶望感を味わいながらも,そこから這い上がっていく主人公たちに心打たれました。
つくりこみによって生まれた面白いシーンがあります。ある時フリオニール達は帝国に攫われた王女ヒルダを救出します。ですが,フリオニールはこの救出したヒルダの様子がおかしいという話を聞きます。フリオニールはヒルダの様子を見に行きますが,2人きりの部屋でヒルダはフリオニールを誘惑します。ちょっとキツめの王女様が突然積極的になっちゃうという同人誌まがいの展開に…。
はやくきて…。じらさないで…。
ゴクッ…。
ゲーム難易度が極端…?
ゲーム難易度が高くなってしまう要因は育成以外にも。それは比較的高めなエンカウント率と敵の強さに起因しています。昔のゲームあるあるだと思いますが,フィールドやダンジョンを歩き回らなければならないため何度も戦闘を余儀なくされます。そして現れる敵キャラですが…強さが極端な印象です。防御力が高い敵が普通にエンカウントしたり,異常に攻撃力が高い敵がいっしょに現れたりと対処に苦労します。特にラストダンジョン「パンデモニウム」では強敵が普通に現れます。育成をそれなりにこなしていないと苦戦を強いられることになるでしょう。
クリア後のやりこみ要素① ”ソウルオブリバース”
ゲームボーイアドバンス版ではクリア後のやりこみ要素として”ソウルオブリバース”が追加されています。これは本編中で死亡したキャラクターたちがパーティーを組んでダンジョンを攻略していきます。サブストーリーのような位置づけで地下10階まで続いています。ダンジョンでは本編で登場しない強敵が現れたり,中ボスが待ち構えていたりとより高難度なコンテンツです。もちろん貴重品やアイテムが入手できますので,しっかり育成してから挑戦してみましょう。
クリア後のやりこみ要素② ”秘紋の迷宮”
こちらはPSP版以降で登場するエクストラダンジョン”秘紋の迷宮”です。前述したワードメモリーシステムを駆使して次のフロアマップを決めていくというユニークなダンジョンです。本編とは関係のない要素ではありますが,ダンジョンにはいつでも入れます。新しい言葉を覚えるたびに挑戦すれば,強力な武器や防具を入手できますので攻略に有利に働くでしょう。ちなみにダンジョン内でセーブはできません。ダンジョンでは特殊なルールがあります。
ルール | 詳細 |
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同じ迷宮で同じ言葉は使えない | 1つの迷宮で同じ言葉は1回しか使えません。覚えている言葉がその迷宮のフロア数より少ない場合はクリアできません。別の迷宮では使用することはできます。 |
言葉には相性がある | 連続して使った2つの言葉の組み合わせによって相性が決定します。相性が良いほどそのマップのモンスター出現率が低くなり,宝箱のアイテムも良質になります。 |
各マップでのイベント | 各マップには光の柱(ゴール)とは別に特定のイベントがあり,これをクリアすると新たな言葉や別のマップ攻略のためのヒントが得られます。言葉は新たなマップ攻略に必要です。 |
序盤から強力な武器を入手できる良い機会ですので,積極的に挑戦したいですね。
まとめ
FINAL FANTASY IIは黎明期であるが故にシステム面がかなり尖ったタイトルになっています。ゲーム難易度も相まって実際にクリアするのも苦労するわけですが…。一方で,ストーリーは絶望に抗うシーンが目立つシリアスな内容になっています。人間ドラマの様相が色濃く,前作との差別化もはかられることとなりました。
移植版は改善されている部分もありますが,このタイトルのクリア経験のある方はRPG玄人だと思います。未プレイの方は興味本位でもいいので,プレイしてみませんか??
- 育成や敵キャラなどシリーズ屈指の難易度のため,上級者向け
- 絶望に立ち向かうシナリオが高評価
- シナリオを引き立てるワードメモリーシステム