FINAL FANTASY XIIIは2009年にPlayStation3にて発売されたシリーズ第13作品目のタイトルです。プラットフォームがPS3に移行したことでシリーズ初のHD化が施され,高画質なグラフィックでの映像が楽しめます。加えて音楽も人気が高く,美麗な映像とマッチしたものとなっています。
『FF XIII』には本編のその後を描いた作品が2つリリースされ,『ファイナルファンタジー XIII-2』と『ライトニングリターンズ ファイナルファンタジーXIII』です。『FF XIII』はさぞ人気のタイトル!…かと思いきや世間からの風当たりの強さは有名です。”FFシリーズの衰退期”の始まりともいわれる批判が目立ちます。
その要因は「シナリオ」と「プレイ感」に集約されているといえます。その辺りも詳しくまとめたいと思います。
概要
FINAL FANATSY XIIIは2009年にPS3にて発売され,続編は2011年に『ファイナルファンタジー XIII-2』,2013年に『ライトニングリターンズ ファイナルファンタジーXIII』がいずれもPS3にて発売されました。これらはFFシリーズの大型プロジェクト「ファブラ ノヴァ クリスタリス ファイナルファンタジー」の一環として構成されており,本作のほか『ファイナルファンタジー零式』,『ファイナルファンタジーXV』が内包されています。舞台設定は異なるものの,1つの神話をベースとしているという共通点があります。
さて,『FFXIII』ですが,初週売り上げは150万本とPS3ソフト初のミリオンセラーを達成。PS3本体の売り上げも牽引し,PS3の週間販売本数も発売以来最高を記録するなど人気を博していました。本作はPS3のほかXbox,Windows,スマートフォンなどでプレイ可能ですが,現状PS4などへの移植はされていません。移植版発売には10数年後のケースもあるので,近々発売されるかもしれません。
主要人物
- ライトニング cv. 坂本真綾
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本作の主人公で聖府の警備軍に所属する兵士。ぶっきらぼうな性格で口調が強く比較的悪い。一方で決めたことを最後まで貫く信条を持つ。若くして両親を失ったためか,妹のセラに対しては少々過保護なところがある。
- セラ・ファロン cv. 寿美菜子
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ライトニングの妹であり,スノウの婚約者。姉を常に気遣いつつも自分のことは自分で解決するという芯の強さを持っている。興味本位で立ち入った異跡でファルシのルシに選ばれてしまう。これがきっかけとなって物語が動き始める。
- スノウ・ヴィリアース cv. 小野大輔
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ワイルドな風格でポジティブな熱血漢。反聖府組織「ノラ」のリーダーで面倒見が良いが,ライトニングやホープからは強い反感を買うことになる。セラとは婚約関係にあり,ライトニングからは好ましく思われていない。本人は認めてもらうため努力している。
- ホープ・エストハイム cv. 梶裕貴
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何不自由なく生活していた上流階級の少年。反聖府組織「ノラ」に所属していたスノウの勧誘が原因で,母が聖府との戦乱で亡くなってしまう。ゆえにスノウや聖府軍を憎んでおり,強く当たるシーンが目立つ。
- サッズ・カッツロイ cv. 江原正士
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社会的分別を弁えており,いわゆる常識人枠。アフロヘア―が特徴でチョコボのヒナが棲みついている。義理人情に厚く涙もろい。「ファルシを破壊する」という目的で行動するさなかライトニングと出会い,行動を共にする。
- ヲルバ=ダイア・ヴァニラ cv. 福井裕佳梨
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明朗快活な性格だが,素性や行動目的が謎めいた少女。道中たまたま出会ったホープと共に旅に同行する。のちに自身の行動が原因でサッズとの軋轢を生んでしまったことを知り,当初の目的から心境の変化が見られるようになる。自身はルシであるが使命の遂行にはこだわっていない。
- ヲルバ=ユン・ファング cv. 安藤麻吹
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聖府軍の騎兵隊と行動を共にしている強気な女性。ヴァニラを探して行動しており,人々からは”ルシ”として忌み嫌われている。同じくルシであるヴァニラを”シ骸”にしたくないという想いから使命の遂行にこだわっている。使命の遂行にこだわらないヴァニラとは行違うこともしばしば。
ストーリー
本作は専門用語が多く難解であるため,以下に用語の説明を載せておきます。
ファルシ | 人に使命を与える人知を超えた存在。物語の騒動の発端となったのはパルスのファルシ。 |
ルシ | ファルシから使命を与えられた人間。決められた時間内に使命を果たせなかった者はシ骸とという怪物になり,使命を果たした者はクリスタルとなり永遠を手に入れる,とされている。今回操作するキャラクターはパルスのファルシのルシにあたり,聖府からは敵として命を狙われる。 |
パージ | パルスに関わった人々をパルスに送る聖府の政策。名目上は「パルスに対する生贄」とされているが,実際には「危険分子の排除」とライトニングは語る。 |
超常的な存在「ファルシ」たちによって支えられる巨大な球体の世界”コクーン”と魔獣が闊歩する地上世界”グラン=パルス”に二分されていた。ある時コクーン内部に眠っていたパルスのファルシによってセラがルシに変えられてしまう。コクーンの人々はルシを忌み嫌うことから,聖府は「パージ政策」として,パルスに関与した者をグラン=パルスへと追放しようとする。
コクーンに眠るパルスのファルシを倒すため図らずとも行動を共にすることになったライトニング,スノウ,サッズ,ホープ,ヴァニラの5名はファルシを倒すもルシに変えられてしまう。そこで課せられた使命に対して,各々が悩み葛藤しながらも自らの運命に抗っていく。
戦闘システム
スピード感のあるバトルスタイル
従来のアクティブタイムバトル(ATB)が採用され,スピーディーな展開でコマンドが連鎖するバトルシステムです。ATBゲージはストックすることができ,ATBゲージの消費量に応じて連続攻撃ができます。また敵に連続してダメージを与えるとチェーンゲージが増加していきます。攻撃が途切れると時間経過でゲージは減少しますが,ゲージがMAXになった敵はブレイク状態になり与えるダメージが大幅に増加します。素早い判断でバトルを有利に進められます。
ジョブのような新要素 ”ロール”
FFらしさともいえるジョブシステムが新しく進化しました。本作では”ロール”と呼ばれるシステムでキャラクターの能力やアビリティが変化します。このロールによって固有のボーナス効果を生み出し,パーティー全体に影響を与えます。そしてこの効果はロールのレベル上昇,あるいは同じロールのキャラがパーティー内にいることで高まります。
ロール | 特徴 |
---|---|
アタッカー(ATTACKER) | 物理・魔法攻撃力UP,チェーンゲージが減りにくい |
ブラスター(BLASTER) | チェーンボーナスUP,属性攻撃によりチェーンゲージが増えやすい |
ディフェンダー(DEFENDER) | 物理・魔法防御力UP,挑発により攻撃を引き付けやすくなる |
ヒーラー(HEALER) | 回復量UP,攻撃はできない |
エンハンサー(ENHANCER) | パーティー支援効果の持続時間UP,攻撃はできない |
ジャマー(JAMMER) | 敵の弱体化効果の持続時間UP |
ロールに合わせた戦闘スタイル ”オプティマ”
ロールの組み合わせ次第では”オプティマ”という陣形のような働きが発動し,戦闘を優位に進めることができます。オプティマの変更中は短い演出が入り,パーティーの戦力と行動パターンを変化させられます。例えばアタッカー+ブラスター+ブラスターでは「ラッシュアサルト」が発動し,チェーンゲージを増加させつつ相手のブレイクを狙えます。この戦術次第では格上相手にも引けをとらない戦闘ができるため,オプティマは特に重要な要素です。
専用の相棒と共闘 ”召喚獣”
本作では各キャラクターごとに専用の1体の召喚獣を取得することができます。召喚にはタクティカルポイント(TP)が必要で,戦闘終了時のリザルトランクに応じて獲得できます。召喚中は召喚者と召喚獣のみで戦闘し,召喚者が成長すると召喚獣も自動的に成長します。召喚者のTPゲージはドライブゲージに変化し,この量が多いほどドライビングモードの際の総コストが増加し技をたくさん繰り出せます。また召喚中に召喚者がHP0になった場合,召喚者にリレイズを使用して召喚獣は帰還します。
- サモンポイント(SP)
-
召喚獣のHPにあたる数値。被弾したり,時間経過で減少し,一定量まで減少するとドライビングモードも減少し始め,SPが尽きると帰還します。
- ドライビングモード
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召喚獣が馬や車に変化し,召喚者を乗せて戦闘します。この間,画面左下に総コストが表示され,技を繰り出すたびに必要コスト分だけ差し引かれます。また画面左下の赤いゲージは時間経過で減少します。ゼロになる前に技を繰り出すとゲージは最大まで戻りますが,ゼロになると召喚獣は自動的にフィニッシュ技を発動して帰還します。
召喚者 | 召喚獣 |
---|---|
ライトニング | オーディン |
スノウ | シヴァ |
ホープ | アレキサンダー |
サッズ | ブリュンヒルデ |
ファング | バハムート |
ヴァニラ | ヘカトンケイル |
戦略に合わせて育成 ”クリスタリウム”
本作には経験値によるレベルアップの概念はなく,戦闘後に得られる”クリスタルポイント(CP)”を用いて育成します。『FFX』のスフィア盤に近しいですが,クリスタリウムはキャラクターごとに独立しています。クリスタリウムは多層構造で,物語の進行に合わせてクリスタリウムレベルも上昇し,盤面と取得できるクリスタル数が増加します。クリスタルは5種類あり,「パラメータ上昇」「アビリティ取得」「アクセサリ枠増加」「ATBスロット増加」「ロールレベル上昇」があります。ちなみにCPは戦闘に参加していなくでも入手できるので,特定のキャラだけ遅れをとるということはないでしょう。
体験談(※一部ネタバレあり)
圧巻の映像美と楽曲の数々
技術の進化も相まって,映像と楽曲は高クオリティーでさすが!といえます。PS3へと移行したことで表情が繊細に表現されるようになり,細かな感情表現もしっかり見て取れます。ムービー中はもちろん,戦闘中も美麗なグラフィックで表現され,爽快感を感じられます。一方で,楽曲は場面に応じて緩急をつけて切り替わるため臨場感を演出してくれます。本作の楽曲はシリーズのなかでも人気があり,『FF大投票』企画では「サンレス水郷」や「閃光」などが上位にランクインしています。戦闘BGMの「閃光」は私もお気に入りでした。
シナリオが難解すぎて…
本作はシナリオが難解すぎることで有名で,しばしば悪評をつけられています。先述したように専門用語が多く,会話がスムーズに理解できない点がストレス要因となっているようです。作中で説明はあるものの,必要のない複雑さだったのでしょう。「会議のアジェンダは○○なので,日程をフィックスして」といわれると鼻につくように,「パルスのファルシのルシがコクーンでパージ」といわれると萎えますからね…。加えて世界観や設定もつくりこまれているため,さらに解釈の障害となってしまっているのです。これは『ファブラ・ノヴァ・クリスタル』の絡みによるものですが,話すと長くなるので,別途記事を用意したいと思います。
一本道ゲームの明暗
本作に悪評が目立つもうひとつの要因はゲーム性です。RPGといえば自由度の高い探索をイメージされる方が多いかと思いますが,本作にはそれがないといわれています。いわゆる”一本道ゲー”というもので,プレイヤーは窮屈感を感じてしまいます。ですが,シリーズでも非常に人気の高い『FFX』も一本道ゲーといわれています。この差は一体なんなのか…。ファンの間では「シナリオの完成度」と「一本道の本質」が違うためと推測されています。前者はお伝えした通りです。後者ですが,本作は厳密には一本道ではなく一方通行であり,より自由度が低く感じてしまうと言われています。シナリオに集中してもらいたいという制作側の意図だそうですが,そのシナリオがこれでは…。
ちなみに11章以降は広大なフィールドを探索,ミッションこなしに着手できます。ただし11章までが10~20時間ほどかかるため,単調で苦痛といわれたりしています。これに関しては私もマイナスに感じ,個人的評価が下がりました。
まとめ
FINAL FANATSY XIIIは舞台設定を複雑化した結果,批判が目立つタイトルになってしまいました。用語をすんなり理解できる方には問題ではありませんが,物語を整理しにくいのは不親切といわれても仕方ないかもしれません。RPGにおいて最重要なシナリオが低評価されたことで”FFシリーズの衰退期”といわれるようになったのでしょう。
ですが,戦闘システムやBGMなどはシリーズのなかでも評価の高いものであることも事実です。戦術の展開というより,その場の判断力が求められる戦闘は本作ならではの醍醐味です。
FF XIIIの用語解説を見ながら,今一度プレイしてみてはいかがでしょうか。
- 美麗な映像と臨場感のある音楽がおりなす見ごたえのあるシーンの数々
- スピード感と判断力がカギとなる戦闘システム「ロール」と「オプティマ」
- 作品自体の賛否はあれど,シリーズを通じて高い人気を誇るBGM