FINAL FANTASY Xは2001年にPlayStation2にて発売されたシリーズ第10作品目です。本作はPlayStation2へと移行したことにより,グラフィックや演出面が大幅に向上しました。さらにシリーズ初となるキャラクターボイスが採用されるなど,当時のゲーム技術の最先端を詰め込んだ作品となっています。この頃のシリーズタイトルはその完成度の高さから「FF黄金期」と呼ばれ,数多くのファンに今なお愛されています。
概要
FINAL FANTASY Xは2001年にPlayStation2(PS2)で発売され,その後HDリマスター版としてPlayStation4やNintendo Switchなどにも移植されました。またシリーズ初となる物語上の続編としてFINAL FANTASY X-2が2003年に発売されました。PS2のタイトルとして初めてダブルミリオンを記録し,全世界累計850万本を販売しました。またFFXシリーズとしては,全世界で2,000万本以上売り上げるなど,国内外問わず非常に人気のあるタイトルです。
本作はPS2へプラットフォームが移行したことにより,ゲーム全体のパフォーマンスが向上しました。グラフィックはもちろんのこと,キャラクターに声がつき表情の変化も鮮明になったため,キャラクターの複雑な心境を感じ取ることができるようになっています。これらの表現力の向上により,楽曲を進化させることができたと作曲担当の植松氏は述べています。それまでのシリーズでは場面やキャラクターの心情を楽曲を通じて表現していたそうです。本作ではボイス等の実装により,楽曲のメロディを重視した編曲ができたそうです。
発売から20年以上経った今でも不朽の名作といわれ,Youtube配信されたり,歌舞伎公演されたりしています。発売から10年以上経った2011年に「泣けるゲームソフト20選」で堂々の1位を獲得しました。また2020年に「全ファイナルファンタジー大投票」では作品部門と音楽部門で第1位を獲得しました。このようにファンはもちろん,非常に多くの方からの支持を受けています。
主要人物
- ティーダ
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ザナルカンドのブリッツボールチーム「ザナルカンド・エイブス」のエース。同じくブリッツの伝説的選手で父親ジェクトを嫌っている。
街がシンに襲撃された際にスピラに迷い込み,そこで出会った仲間たちと旅を始める。旅のなかでスピラの理や父親ジェクトの想いを知り,自身に何ができるのかを考えるようになる。
- ユウナ
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ビサイド島で育った召喚士で10年前に「シン」を倒して亡くなった大召喚士ブラスカの娘。生真面目で正義感が強く,「シン」を倒すための力”究極召喚”を得るためにザナルカンドを目指して旅に出る。同郷のワッカやルールーのことを兄や姉のように慕っている。
- ワッカ
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ビサイド島のブリッツボールチーム「ビサイド・オーラカ」の選手兼コーチ。スピラに浸透しているエボンの教えを信じて忠実に守って生きている。2年前,弟が教えに反するアルベド族の機械を使って「シン」と戦ったが死亡。以来,機械を使うアルベド族を毛嫌いしている。
- ルールー
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ワッカの幼馴染で豊富な知識を持った黒魔導士。不測の事態にも冷静に対処するため,仲間からも一目置かれている。時折きつい言動が見られるが,根は優しい。スピラのことを知らないティーダに対して,丁寧に説明してくれる。2年前に亡くなったワッカの弟は恋人だった。
- キマリ=ロンゾ
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ロンゾ族の青年で,ユウナをビサイド島まで連れてきた。以来,ガードとしてユウナを護衛し続けている。無口で無表情なため心情はわかりにくいが,真面目で仲間思い。角が折れているのは過去にロンゾ族の仲間に馬鹿にされて折られた。
- リュック
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アルベド族の少女で,ティーダがスピラにわたって初めて出会った人。自他共に認めるムードメーカーで子供っぽい反面,現状を客観的に観る目を持ち,前向きな姿勢をとる。
幼少期にサンダー魔法を直撃したことが原因で,雷が大の苦手。
- アーロン
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10年前大召喚士ブラスカと共に「シン」を倒した伝説のガード。ザナルカンドで「シン」の襲撃を受けた際,ティーダと共にスピラへ渡った。しばらくして旅をしているティーダたちと合流し,ユウナのガードとして旅に同行するようになる。
- ジェクト
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ティーダの父親でブリッツボールの名選手。しかし突如として行方不明となり,ザナルカンドでは大きな話題となっていた。ティーダからは嫌われており,嫌味ったらしく接していた。一方で,困っている人を見過ごすことができないなどティーダと似通った一面もある。
- ブラスカ
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10年前,アーロン,ジェクトと共に「シン」を倒し,自身は死亡した。召喚士になる前は僧官を務めていた。その後アルベド族の女性と結婚したため,”エボンの落ちこぼれ”と言われていた。しかし妻は「シン」の襲撃で命を落としてしまった。妻の復讐のため召喚士となった。
- シーモア
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グアド族の族長でエボン四老師の一人。優秀な召喚士でもあるが,何故かティーダからは初対面から好かれていない。グアド族の父親と人である母親の間に生まれたが,これが理由で母親と共に迫害を受けるなど,幼少期は不遇があった。
ストーリー
本作はスピラが舞台となる。機械文明が発展しておらず,人々は質素な生活をしている。一方で魔法文明などは発展しており,独自のスポーツ「ブリッツボール」は世界中で支持されている。
ところがスピラには「シン」と呼ばれる巨大な魔物が存在し,近づくだけで町は破壊されるなど人々は死の恐怖に脅えて暮らしていた。そんな人々は「エボンの教え」と「召喚士」を心の支えとしている。人は「エボンの教え」を守り,教えに従って「召喚士」の旅を支えることで,いつか「シン」が消滅することを希望に生きている。
ティーダはザナルカンドでブリッツボールの試合をしていたが,突如「シン」の襲撃を受ける。共に行動していたアーロンとスピラへと迷い込んでしまう。何もわからないままティーダはスピラの世界でユウナたちと出会う。ユウナは召喚士として「シン」を倒す旅へ向かう。ティーダはザナルカンドへ帰り道を探すために旅へ同行することとなる。
戦闘システム
戦術を構築しやすくなった ”CTBシステム”
本作はそれまで採用されていたアクティブタイムバトル(ATB)システムから「カウントタイムバトル(CTB)システム」が採用されています。ターンの概念はなく,いずれかのキャラクターが行動している間は全体で時間が停止します。各キャラはすばやさや行動内容から,次に行動可能となるまでの時間(画面右上)が決定します。
加えて行動には”行動負荷“が設定されており,CTBの順序に影響を与えます。強力な行動は負荷の高い傾向にあり,たとえ素早さが高くても順番が回りにくくなります。その代わりといってはなんですが,行動をとる前にCTBの順序を確認することができます。そのため非常に戦術を構築しやすくなったといえるわけです。
戦うだけの成長ではない ”スフィア盤”
本作は敵を倒してレベルアップするのではなく,「スフィア盤」と呼ばれるシステムで成長させます。敵を倒すとスフィアレベルがアップし,このレベルの分だけスフィア盤上でマスを進めることができます。スフィア盤上に配置された成長スフィアを発動させることで能力値のアップし,技や魔法を習得できます。スフィア盤は共通ですが,キャラクターごとに異なる開始地点が設定され,他のキャラクターのルートに進むこともできます。
ゲームのはじめに「通常スフィア盤」と「上級者スフィア盤」を選択することになりますが,スフィア盤の内容が異なります。一度選択すると変更できなくなるので,自身の育成方針にあった方を選びましょう。
通常スフィア盤
「通常スフィア盤」は各キャラクターごとにあらかじめエリア分けされていて,直感的に育成できます。どのキャラも均等に成長させられるのが特徴です。また上級者スフィア盤よりもマス数が多いため,能力値の最大値は高くなります。一方で,育成方針が変わった際に,エリアをまたぐために特別なスフィアを使用しなければなりません。加えてマス数が多いため,強力なアビリティを入手するまでに時間がかかってしまうデメリットもあります。
上級者スフィア盤
「上級者スフィア盤」は特別なスフィアを使用することなく他のキャラクターのエリアに進むことができます。通常スフィアよりもマス数が少ないため,強力なアビリティを短時間で入手できるメリットもあります。ただし分岐ルートが多く,自身で考えて育成しなければなりません。場合によってはステータスが片寄ってしまうので注意が必要です。
さらに拡張された個性 ”オーバードライブ”
これまでのシリーズでも「リミット技」や「特殊技」など個性を打ち出した必殺技が実装されていました。本作ではさらに拡張された”オーバードライブ”が採用されました。特定条件下でオーバードライブゲージが溜まり,MAXになるとオーバードライブ技を使用できます。
オーバードライブタイプ | 効果 |
---|---|
修行 | 敵からダメージを受ける |
闘志 | 敵にダメージを与える |
憤怒 | 仲間がダメージを受ける |
慈愛 | 仲間のHPを回復させる |
策略 | 敵に不利なステータス変化を起こさせる |
窮地 | 不利なステータス変化にさせられる |
華麗 | 敵の攻撃を回避する |
悲哀 | 味方が戦闘不能になる |
凱歌 | 敵を倒す |
英雄 | HPがダメージの3倍より大きい敵,または最大HP10,000以上の敵を倒す |
盤石 | 敵のステータス変化を無効化する |
勝利 | 戦闘パーティーにいる状態で戦闘に勝利 |
恥辱 | 戦闘で逃げる |
対峙 | 自分のターンが回る |
苦悶 | ステータス異常中にターンが回る |
危機 | 現在HPが最大値の25%以下でターンが回る |
孤高 | 戦える味方が自分のみでターンが回る |
各キャラごとにいくつかのオーバードライブ技を習得でき,入手方法や効果などさまざまです。個性的なモーションを披露してくれるので,見ごたえも抜群です。
キャラクター | OD技 | 備考 |
---|---|---|
ティーダ | 剣技 | スパイラルカット,チャージ&アサルト,エナジーレイン, エース・オブ・ザ・ブリッツ |
ユウナ | マスター召喚 | 召喚獣のODゲージをMAXで召喚 |
ワッカ | スロット | エレメントリール,アタックリール,ステータスリール,オーラカリール |
ルールー | テンプテーション | リフレク,魔法防御無視の連続魔法 |
キマリ | 敵の技 | 習得した敵の技を発動 |
リュック | 調合 | アイテム2つを組み合わせて使用 |
アーロン | 秘伝 | 牙龍,流星,征伐,陣風 |
なかでもリュックの調合はかなり強力で,組み合わせによっては味方全体にバフをかけたり,敵全体に属性ダメージを与えたりと万能です。イメージとしては『FFV』の薬士のちょうごうと同じです。
自ら操作して戦う召喚獣
シリーズおなじみの召喚獣が本作では非常に重要な存在になっています。それは戦闘面でも同じです。ユウナのみ召喚でき,召喚時はパーティーと交代して召喚獣を操作して戦います。召喚獣ごとに固有アビリティ,オーバードライブ技を持っており,豪快でド派手なモーションが見られますよ。
召喚獣 | オーバードライブ技 |
---|---|
ヴァルファーレ | シューティング・レイ,シューティング・パワー |
イフリート | 地獄の火炎 |
イクシオン | トールハンマー |
シヴァ | ダイアモンドダスト |
バハムート | メガフレア |
ようじんぼう | 斬魔刀 |
アニマ | カオティック・D |
メーガス三姉妹 | デルタアタック |
体験談(※一部ネタバレあり)
最も人におすすめしたいFF
本作はグラフィックの向上やボイスも採用されたことで,非常に完成度の高いシナリオとなっています。シナリオの完成度の高さはFF史上No.1といえるでしょうし,個人的にも最もおすすめしたいFF作品です。シナリオの完成度が高まった要因として,「ティーダの役回り・立ち振る舞い」が重要だと感じました。ティーダは突如スピラの世界に飛ばされます。そしてその世界の常識もわからないまま旅へと向かいます。これはプレイヤーとほぼ同じ状況となっています。加えてティーダが素直に自分の気持ちを話してくれるなど,プレイヤーとしても世界観や展開についていくことができます。「ティーダの役回り・立ち振る舞い」が私たちに没入感を与え,感情移入しやすくなっていると考えられます。
やりこみ要素
本作はよくわからんミニゲームを含むやりこみ要素がいくつか存在します。これらは最強武器”七曜の武器”にまつわるアイテムを入手するための要素です。詳細を知りたい方は以下の記事を読んでみてください。
やりこみ要素① 雷避け
こちらは『FFX』でも有名なやりこみ要素の”雷避け”。雷が鳴り続けるエリア雷平原でのミニゲームです。雷が光ったタイミングに合わせて〇ボタン/Aボタンを入力すると落雷を避けることができます。これを200回連続で避けるというのがやりこみ要素。忍耐力が問われるやつで,発狂した経験者もいるのでは??
達成すると『FFX』における最強武器シリーズ”七曜の武器”を強化するアイテムが入手できます。武器そのものではないので,発狂してまで取らなくてもいいかもしれませんね…。ただしこの後紹介するボスを倒すためには必須となるので,すべてを超えたい方はこの苦行に耐えましょう。
やりこみ要素② モンスター捕獲
この画像を見てピンときた方は”『FFX』を超えし者”でしょう。『FFX』のやりこみ要素のひとつである”モンスター捕獲”です。シナリオ中盤以降になると開放される要素で,専用の武器を使ってモンスターを倒すと捕獲することができるようになります。そして世界各地のモンスターを捕獲していくとオリジナルモンスターと戦闘できるようになり,クリアすると貴重なアイテムが入手できます。最終的に登場するモンスターが「すべてを超えし者」です。エンドコンテンツでもあるボスで頑張って勝てる相手ではありません。育成はもちろん,装備やアイテムまで整えた上で挑まなければ勝負にもなりません。『FFX』を最後までやりつくした方のみがこのボスと戦い,勝利することができるでしょう。召喚獣「ようじんぼう」なら斬魔刀で…。
乱用注意!全てを斬り伏せる斬魔刀
本作のぶっ壊れ要素といえばようじんぼうが繰り出す斬魔刀でしょう。その効果は「敵全体に即死」というもので,あらゆる敵をぶった切ります。つまりボスであろうと,HPが数百万の敵であろうと一撃必殺。乱用すると戦闘のおもしろみを失ってしまうためご利用は計画的に。ただ斬魔刀はそう頻繁に発動するわけではありません。
そもそもようじんぼうの仕様が「心づけとしてギルを渡すと,その額に応じて行動決定」します。ようじんぼうには相性値があり,その値で繰り出す技が変化します。
- 相性値と行動一覧
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ダイゴロウ:-1
小柄:±0
脇差(単体):+1
脇差(全体):+3
斬魔刀:+4
心づけなしで戻す:-3
ようじんぼうが戦闘不能になる:-10
心づけで0ギルを選択:-20
相性値の初期値は128で,最大255まで上がります。相性値,あるいはオーバードライブゲージが高いほど斬魔刀が発動しやすくなります。日々の戦闘でもようじんぼうを使用するかと思いますが,ギルをケチりすぎるのは注意ですね。
まとめ
FINAL FANTASY Xは時代の変化に合わせた挑戦の結果,大成功を収めたタイトルといえるでしょう。今作のシナリオは自信を持っておススメできます。私も記憶を消してもう一度プレイしたいと思えるほどには感慨深い作品です。
その人気の高さからFFシリーズランキングでは1位に輝き,歌舞伎に舞台化されるなど話題に尽きません。詳細が気になる方は,FFシリーズをまとめた以下の記事をご参照ください。最後になりますが,未プレイの方はぜひプレイしてFFXのストーリーを体感してください!
- シリーズ初のキャラボイスが採用され,奥深いシナリオに進化
- 独自の成長システムで戦略的な育成・戦闘が楽しめる
- 『全ファイナルファンタジー大投票』にてシナリオと音楽の両部門で第1位に輝く