FINAL FANTASY VIは1994年にスーパーファミコンにて発売されたシリーズ第6作品目です。本作はそれまでのシリーズの世界観とは異なり,機械文明に覆われたダークファンタジーとなっています。また前作『FFV』からグラフィックが一新され,ドット絵でありながら表現力が向上しました。
本作のテーマは”群像劇”とされ,さまざまなキャラクター同士のかかわり合いが魅力となっています。各キャラクターごとにそれぞれ並行してストーリーが展開され,時には自由にパーティーを入れ替えられるほど大所帯になります。流動的な展開はプレイしていても飽きずに最後まで楽しみ続けられます。2Dファイナルファンタジーの集大成をぜひご覧いただきたいと思います!
概要
FINAL FANTASY VIは1994年に発売され,後にPlayStationやゲームボーイアドバンス(GBA)に移植されました。オリジナル版は国内で約250万本,海外では約290万本を売り上げ,各種ゲーム誌で受賞するなど高い評価を受けています。本作は「特定の主人公を擁さない群像劇」として描かれており,最大14人のプレイヤーキャラクターが登場します。必ず全てのプレイアブルキャラクターが集合するかはプレイ次第です。かなり大所帯ですが,それぞれのシナリオがしっかりと描かれている点もぬかりないといえます。
本作には経験値取得を回避するしくみがあるため,現在でも低レベル攻略といったやりこみの題材とされる作品となっています。とはいえこれまで構築されてきた戦闘システム,ジョブ要素,パーティー/装備品の編成などが引き継がれているためゲーム難易度はやや低いといったところでしょう。2Dファイナルファンタジーの集大成となっていますので,ぜひプレイしてもらいたい作品です。
主要人物
- ティナ・ブランフォード
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赤子の頃にガストラ皇帝に拾われ,操られていた魔道戦士。ナルシェで氷漬けの幻獣と出会い,その運命が変わっていく。感情を抑えられて育ち,一部の記憶が欠けていることから,自由の身となってからも苦悩することが多い。「魔法」の力を生まれながらに持つ
- ロック・コール
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反帝国組織「リターナー」に属する自称トレジャーハンター。愛する人を失った後悔から,女性を守ることに強い意識を持っている。ストーリー序盤から登場し,ガストラ帝国から逃れたティナを守る。敵からアイテムを「ぬすむ」ことができる。
- エドガー・ロニ・フィガロ
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フィガロ王国の国王。表向きはガストラ帝国と同盟を結んでいるが,裏では反帝国組織「リターナー」を支援している。女性に対しては年齢にかかわらず口説かずにはいられない性格。マッシュは双子の弟。様々な「きかい」を使って攻撃する。
- マッシュ・レネ・フィガロ
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自由を求めてフィガロ城を飛び出し,修行を積んでモンクとなった。善良な人物だが周囲の機微に疎く,先代国王の容体が悪化した時に気づけなかった。エドガーは双子の兄。コマンド入力で「ひっさつわざ」を発動できる。
- シャドウ
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外見は黒装束をまとった姿で,金のためなら親友も殺すといわれる暗殺者。相棒インターセプターと常に行動を共にしている。武器を「なげる」ことで攻撃できる。インターセプターが戦闘中攻撃を受け止めてくれることがあり,その際に反撃技が発動することがある。
- カイエン・ガラモンド
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ドマ国の剣士でストイックかつ勇猛な性格。ガストラ帝国が祖国を侵攻し毒を使用したことで,妻子を失う。以来,帝国に強い恨みを持つ。機械が苦手だが,克服しようとひそかに勉強している。「ひっさつけん」で様々な剣技を使う。
- ガウ
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獣ヶ原で魔物に育てられた孤児で,人と意思疎通はできるうものの会話はやや苦手。獣ヶ原でモンスターと戦闘中に「とびこむ」ことでモンスターの行動パターンを習得できる。「あばれる」を使うことでそのモンスターになりきって戦うことができる。
- セリス・シェール
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ガストラ帝国軍の将軍で,幼いころから英才教育を受けてきたエリート。帝国の方針に疑念を持ち,処刑されそうになっていたところをロックに助けられる。以来ロックに惹かれ,次第に軍人から女性らしさが際立つようになる。「まふうけん」で魔法を吸収し,自身のMPに変換する。
- セッツァー・ギャッビアーニ
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さすらいのギャンブラーでスリルを好み,自分の命さえチップとして投げ出す。世界で唯一の飛空艇ブラックジャック号を持つ。「スロット」で出た目によって多彩な攻撃を繰り出し,所持金を投げて攻撃する「ぜになげ」も使用できる。
- ストラゴス・マゴス
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サマサ村出身で魔導士の血を引く老人。かつてはモンスターハンターとして活躍しており,伝説の怪物ヒドゥンを追っていた。敵の特殊攻撃をラーニングし,「おぼえたわざ」として使用することができる。
- リルム・アローニィ
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ストラゴスの孫娘で,口が非常に悪いが思いやりのある少女。大きい人が好きでマッシュに懐いている。絵を描くことに天性の才能を持ち,魔物を「スケッチ」することでその魔物の特技を使うことができる。
- モグ
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ナルシェの炭坑に住むモーグリ族のリーダー。幻獣から人間の言葉を教えてもらい,話すことができるようになる。雪男ウーマロを子分に従えている。戦闘時には地形に応じた踊りを「おどる」ことで攻撃や補助など様々な効果を発揮する。
- ゴゴ
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小三角島に生息する巨大なモンスター内のあるダンジョンに住むものまね士。目の前に現れた冒険者たちの世界を救う旅のマネをするために仲間に加わる。仲間が直前にとった行動を「ものまね」することで,同じ行動をする。
- ウーマロ
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ナルシェ炭坑に住み,骨彫刻を愛する雪男。会話はできず口数も少ないが,親分のモグの命令には忠実に従っている。戦闘時は凶暴化し,常にバーサク状態のため行動の指示はできない。特定のアクセサリを装備すると行動パターンが増える。
- ケフカ・パラッツォ
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ガストラ帝国の人造魔導士でかなりの実力の持ち主。ただ魔導注入の副作用により精神が崩壊しており,道化師の格好で幼児語を話す。幼稚で残虐な性格で,身勝手な言動をとるため帝国兵からも嫌われている。
ストーリー
1000年前に起きた魔法の力をめぐる大戦争「魔大戦」。その戦いが終わると世界から魔法の力が消え去り,人々は蒸気と機械の力で世界を復興させていった。しかし帝国皇帝ガストラは幻獣界に潜む幻獣たちを発見し,機械と幻獣から取り出した魔法の力を組み合わせて新たな力「魔導」を生み出した。魔法に比肩するその強大な力で世界征服をもくろむようになっていった。
それから数十年,ナルシェ炭坑に氷漬けの幻獣がいるとの情報が入り,ガストラは帝国兵として養育していたティナと他2名を派遣する。炭坑で幻獣と相対した瞬間,ティナと幻獣が互いに強い反応を示し強い光を放つ。2名の帝国兵は消滅しティナは意識を失ってしまう。その後ティナは反帝国組織「リターナー」のロックによって救助され,のちにリターナーの一員となって帝国に立ち向かう。
戦闘システム
さらに多様化した基本戦闘
本作はこれまで築かれた戦闘システムの集大成となっています。おなじみのアクティブタイムバトル(ATB)システム,各キャラクターが持つ固有アビリティ,そして幻獣の召喚などなど…。加えて本作には一方が他方を包囲する形で戦闘に突入する「サイドアタック」,「挟み撃ち」が追加されました。
- サイドアタック … 敵がプレイヤーを包囲
- 挟み撃ち … プレイヤーが敵を包囲
包囲された側は背を向けた状態で攻撃を受けるとダメージが1.5倍となります。『FFIII』から登場したバックアタックと異なりダメージ量にまで影響があるため,挟み撃ちを受けたときは致命的ですね。
幻獣の力はステータスをも左右 ”魔石”
一部のキャラを除いて,魔法を使用するためには”魔石”を装備する必要があります。魔石を装備した状態で熟練度を上げていくと,魔法を習得できます。そして装備した魔石によって対応するステータスが上昇するシステム(魔石ボーナス)となっているため,各キャラの成長にカスタマイズ性を持たせることができます。裏を返すと,魔石を装備しなければHP・MP以外のステータスは変化しなくなります。ちなみに魔石は戦闘中に1度だけ使用でき,幻獣を召喚できます。育成を含んだやりこみ要素といえるシステムですね。次の表で示すのはオリジナル版になり,移植版では少々変更されているところがあります。
召喚獣 | 効果/魔石ボーナス | 習得魔法 |
---|---|---|
ラムウ | 敵全体に雷ダメージ/体力+1 | サンダー,サンダラ,ポイズン |
キリン | 味方全体のHPを少しずつ回復/なし | ケアル,ケアルラ,リジェネ,ライブラ,ポイゾナ |
セイレーン | 敵全体を沈黙/HP+10% | スリプル,サイレス,スロウ,ファイア |
ケットシ― | 敵全体を混乱/魔力+1 | カッパー,レビテト,コンフュ |
イフリート | 敵全体に炎ダメージ/力+1 | ファイア,ファイラ,ドレイン |
シヴァ | 敵全体に冷気ダメージ | ブリザド,ブリザラ,アスピル,ラスピル,ケアル |
ユニコーン | 味方全体の状態異常を回復/なし | ケアルラ,エスナ,プロテス,シェル,デスペル |
マディン | 敵全体にダメージ/魔力+1 | ファイラ,ブリザラ,サンダラ |
カトブレパス | 敵全体を石化/HP+10% | バイオ,ブレイク,デス |
ファントム | 味方全体を透明/MP+10% | バニシュ,バーサク,グラビデ |
カーバンクル | 味方全体をリフレク/なし | リフレク,ヘイスト,テレポ,プロテス,シェル |
ビスマルク | 敵全体に水ダメージ/力+2 | ファイア,ブリザド,サンダー,レイズ |
ゴーレム | 味方全体の物理ダメージを防御/体力+2 | ケアルラ,プロテス,ストップ |
ゾーナシーカー | 味方全体の魔法防御アップ/魔力+2 | アスピル,ラスピル,シェル |
セラフィム | 味方全体のHP回復/なし | ケアル,ケアルラ,エスナ,リジェネ,レイズ |
ケーツハリー | 味方全体でジャンプ攻撃/なし | ヘイスト,ヘイズガ,スロウ,スロウガ,レビテト |
フェンリル | 味方全体を分身/MP+30% | ストップ,デジョン,テレポ |
ヴァルガルマンダ | 敵全体に炎,冷気,雷ダメージ/魔力+2 | ファイガ,ブリザガ,サンダガ |
ミドガルズオルム | 敵全体に大地ダメージ/HP+30% | クエイク,トルネド,グラビガ |
ラクシュミ | 味方全体のHP回復/体力+2 | ケアル,ケアルラ,ケアルガ,エスナ,リジェネ |
アレクサンダー | 敵全体に聖ダメージ/なし | ホーリー,プロテス,シェル,デスペル,エスナ |
フェニックス | 味方全体の戦闘不能回復/なし | ファイガ,ケアルガ,レイズ,リレイズ,アレイズ |
オーディン | 敵全体を戦闘不能/素早さ+1 | メテオ |
バハムート | 敵全体に魔防無視ダメージ/HP+50% | フレア |
ラグナロック | 敵単体をアイテムに変化/なし | アルテマ |
ジハード | 敵全体にダメージ/MP+50% | メルトン,メテオ |
ライディーン | 敵全体を戦闘不能/力+2 | クイック |
以下はGBA版,旧Android/iPhone版のみとなります | ||
リヴァイアサン | 敵全体に水ダメージ/体力+2 | フラッド |
サボテンダー | 敵全体に1000ダメージ/素早さ+2 | へイスガ,バニシュ,テレポ |
ディアボロス | 敵全体を瀕死,スリップ/HP+100% | グラビダ |
ギルガメッシュ | 敵全体にダメージ/力+2 | ブレイブ |
体験談(※一部ネタバレあり)
これまで築いたドット技術による表現力
本作はこれまで築き上げてきた技術を駆使した表現力が見どころです。それを感じられた名シーンが”オペラシーン”です。舞台女優とそっくりだと言われたセリスが舞台に上がり,想いを謳う名場面です。本シーンで流れる楽曲「アリア」は物悲し気ながらも美しい名曲です。事前に台本を読んで,適切な歌詞を選択すると舞台が進んでいき,歌唱パートに入ります。このときセリスのドット絵が口ずさんだり,ダンスを踊ったりと表現力豊かです。黎明期からプレイされた方なら,技術の進歩を体感できると思います。ちなみに歌唱シーンは間違えると「なんか違うな?え?ゴメンちゃーい」とお茶目なセリフも。
群像劇が生んだ多様性と奥深いシナリオ
本作のストーリー性は多様性によって生まれたと私は感じています。それまでは限られた人数のなかにジョブシステム等でカスタマイズ性を生み出している傾向があったかと思います。それは元々主人公はプレイヤー自身であり,その人生を最後まで見届けられるようにパーティーの流動が控え目になっていたのかもしれません。しかし『FFIV』や本作では多数のキャラクターと共にストーリーが進行して,さまざまなイベントを通じてバラバラになったり,合流したりと入れ替わりが多いです。これにより最大14人の多彩なキャラクターを余すことなく操作できるおもしろさは感じられる上,多様なシナリオが楽しめました。
皆さんのお気に入りキャラは誰ですか??私は断トツでセリスですね。ストーリーにともなって軍人から女性へと移り行く姿に魅了されました。ストーリー終盤の世界崩壊後は,最初に操作することになるなど中心的な役割を担うようになります。世界崩壊後に流れる楽曲「仲間を求めて」はFFシリーズのなかでも屈指の人気曲です。
超有名な壊れ技 ”バニシュデス”
オリジナル版ではあまりに万能すぎたゆえ,プレイヤーの間でも有名となったバグ技があります。それが”バニシュデス”といわれるものです。バニシュをかけて透明化した敵にデスを唱えるとなぜか効いてしまいます。これはバニシュが「透明になって物理攻撃を100%回避できるが魔法は回避できなくなる」という効果で,本来即死耐性を持っているはずの敵にも耐性を貫通して即死させることができてしまうためと推察されます。つまりボスであろうと即死させてしまう脅威のバグ技です。ただしバニシュが効かない,即死後に復活するアンデットに対しては通用しません。またGBA版からは修正されたため,オリジナル版の醍醐味ともいえるかもしれませんね。
まとめ
FINAL FANTASY VIは個性豊かなキャラクターが非常に多く,各シナリオもしっかり描かれています。そんな思い入れあるキャラ達で挑む冒険はさながら”アベンジャーズ”のようですね。プレイアブルキャラクターの数だけ戦術の幅も広がりますので,ぜひ”仲間を求めて”旅を進めてください。
本作はFFシリーズランキングでは音楽部門・シナリオ部門で上位に入るほどファンからの支持が厚い作品でもあります。比較的プレイしやすい環境なので,ぜひ検討してみてください。
- 最大14人の多彩なキャラクター全員が主人公の群像劇
- シンプルな戦闘システムで初心者でもとりつきやすい
- 音楽やグラフィックなどに奥行きがつき,ドット絵ながらもリアリティを感じられる