FINAL FANTASY Vは1992年にスーパーファミコンで発売されたシリーズ第5作品です。本作ではこれまでのシリーズでもおなじみの「ジョブシステム」をさらに発展させた戦闘システムが構築されています。戦闘がさらに多様化したことで,個性的な強敵も数多く登場しています。
本作は『FF IV』の発売からわずか1年半でリリースされました。それまでのシリーズのついて”システムの奇数作”,”ストーリーの偶数作”と言われ,重視されていた内容がハッキリわかれていると評価されていました。そんななかリリースされた本作は「システム」「ストーリー」の両面の良さが打ち出され,FFブランドを確かなものにした傑作といわれています。
本作のコンテンツ力はどこにあるのか??人気の理由を紐解くと今ではおなじみとなった”FFらしさ”が散りばめられていました!!その魅力について迫っていきたいと思います。
概要
FINAL FANTASY Vは1992年にスーパーファミコン(SFC)で発売され,後にPlayStationやゲームボーイアドバンス(GBA)に移植されています。SFC版はFFシリーズ初となるトリプルミリオンを売上げ,多くのファンを生み出した作品です。プレイされた方も多いのではないのでしょうか?
本作には魅力的な「システム」「楽曲」「キャラクター」が登場し,記憶に残っている方も多いと思います。そしてこれらは後のシリーズにも色濃く受け継がれ,FFらしさを象徴するコンテンツとなっています。そんな名作が2021年には『FF V ピクセルリマスター』としてスマホ版(iOS/Android),PC版が発売され,2023年には『FF I~FF V ピクセルリマスター』としてNintendo Switch版,PS4版が発売されました。主にグラフィックが一新され,BGMの切り替えや経験値調整などの機能が搭載されたことでより快適かつ幅広いプレイが可能になりました。
主要人物
- バッツ・クラウザー
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正義感の強い20歳の青年。父親の遺言に従い,チョコボの相棒”ボコ”と世界を旅する。少年時代の体験により,高いところが苦手。ちなみに「バッツ」という名はオリジナル版発売当初はなく,後に出版された公式ガイドブックで初めて紹介された。
- レナ・シャルロット・タイクーン
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タイクーン唯一の跡継ぎとして育てられた19歳のタイクーン第二王女。幼少より剣と武術を習っており,何事にも負けない心の強さを持つ。隕石の衝突から行方不明の父を追って城を飛び出した際に,バッツと出会う。
- ファリス・シェルヴィッツ
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風のない海でも航海できる船を持つ20歳の海賊の頭。女だとナメられるという理由から男装しており,一人称「オレ」。バッツとは船を盗みに来た際に出会い,のちに出生が明かされる。
- クルル・マイア・バルデシオン
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純粋な心を持ち,チョコボやモーグリといった動物と会話できる14歳の少女。ガラフの孫娘にあたり,他のパーティーメンバーを兄・姉のように慕い,レナを「お姉ちゃん」と呼ぶ。
- ガラフ・ハルム・バルデシオン
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記憶喪失の60歳の老人で,ストーリー進行に合わせて記憶を取り戻していく。誰よりも平和を愛する勇敢な戦士。記憶を失っている間は「ガラフ・ドウ」という仮りの名を名乗る。
- エクスデス
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次元の狭間や無の力に関する知識があり,無の力を手中に収めて世界征服をもくろむ暗黒魔導士。無の力を求めるあまり封印されていたが,ムーアの大森林に邪悪な意思が集まり,樹に宿って人の形となった。そのため植物の生命力を持ち,限りなく不死に近い。
- ギルガメッシュ
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エクスデス親衛隊長で人情に厚く人間臭い言動が多い。高い攻撃力と多彩な青魔法を使った強敵だが,ドジな一面がありどこか憎めない性格。何度もバッツたちの前に立ちはだかるが,戦いを通じてバッツたちの見方が変わってくる。度重なる失態に失望したエクスデスにより次元の狭間へ送られてしまう。
ストーリー
世界は火・土・水・風の4つのクリスタルで構成されていた。1000年前に暗黒魔導士エヌオーが無の力を操り,世界を消し去ろうとしていた。これを封じるためそれぞれのクリスタルが2つにわけられ,世界も二分された(第1世界と第2世界)。
第1世界にて,タイクーン王(レナの父親)は風の流れに異変を感じ,風のクリスタルの元へ急行するがクリスタルは砕け散ってしまう。そんな時,タイクーン城のそばに突如隕石が落下した。近くの森で野宿していたバッツは相棒のチョコボのボコと共に様子を見に行った。ちょうどその時,魔物に襲われていたタイクーン王女レナを助ける。
二人は隕石から出てきたガラフと出会う。「クリスタルを護るために第2世界から隕石でやってきた」と話すが,彼は記憶を失っていた。バッツは二人を放っておけず,世界の異変を調査する旅に同行することになる。
戦闘システム
完成されたジョブシステム
本作の大きな特徴は進化したジョブシステムです。各キャラごとに多彩なジョブがあり,手軽に転職できるようになっています。ジョブごとに独自の能力「アビリティ」を使うことができ,ジョブの修練度を上げることで「アビリティ」を習得できます。さらには各ジョブにはいくつかの「ジョブ特性」が設定されており,そのジョブになると自動で発揮されます。習得したアビリティは他のジョブでも使用することができるため,カスタマイズ性が高く戦術の幅が広がりました。
例えば,「ナイト」は味方を”かばう”ことができますが,「白魔導士」のアビリティを装備すると回復もできるナイトになります。一方で,「黒魔導士」と「白魔導士」のアビリティを組み合わせると多彩な魔法が使えるようになります。
パーティーメンバーの入れ替わりも少ないため,じっくりと育成・強化できる点も好印象。ジョブとアビリティの組み合わせた多彩な戦術を活かした戦闘を楽しめます。またこのシステムは後のシリーズにも受け継がれ,FFを象徴するシステムとなりました。
ジョブ | アビリティ | ジョブ特性 |
---|---|---|
ナイト | まもり | かばう,りょうてもち |
モンク | けり,ためる,チャクラ | かくとう,カウンター |
シーフ | ぬすむ,ぶんどる,とんずら | ダッシュ,かくしつうろ,けいかい |
白魔導士 | しろまほう | |
黒魔導士 | くろまほう | |
青魔導士 | あおまほう,しらべる,みやぶる | ラーニング |
バーサーカー | バーサク | |
魔法剣士 | まほうけん | まほうバリア |
時魔導士 | じくう | |
召喚士 | しょうかん,よびだす | |
赤魔導士 | しろくろま,れんぞくま | |
ものまねし | ものまね | マスターしたジョブのステータス補正値・ジョブ特性を受け継ぐ |
忍者 | なげる,けむりだま,ぶんしん | にとうりゅう,せんせいこうげき |
魔獣使い | とらえる,はなつ,あやつる,なだめる | |
風水士 | ちけい | おとしあなかいひ,ダメージゆか |
吟遊詩人 | うたう,かくれる | |
狩人 | ねらう,どうぶつ,みだれうち | |
侍 | ぜになげ,みねうち,いあいぬき | しらはどり |
竜騎士 | ジャンプ,りゅうけん | |
薬師 | のむ,ちょうごう,ちゆ,そせい | くすりのちしき |
踊り子 | おどる,いろめ | |
すっぴん | マスターしたジョブのステータス補正値・ジョブ特性を受け継ぐ | |
※以下はGBAとHDリメイク版のみ | ||
剣闘士 | ひっさつ,ぜんぎり | こうれつぎり,てきよせ |
砲撃士 | ほうげき,ごうせい | EXPアップ |
予言士 | せんこく,よこく | てきよけ,APアップ |
ネクロマンサー | あんこく,めいやく | アンデット |
個性的な装備の数々
本作の戦闘を左右する要素の一つが装備品です。単純に攻撃力が高い…というものだけでなく,追加効果を持つ装備品も多数登場しています。攻撃すると状態異常付与や即死,魔法追撃や種族特攻など個性豊かです。戦う相手に応じて装備を変更することで戦闘を有利に進められるなど,戦術の幅が広がりますね。なかには入手困難な場所にあったり,敵から盗むことでしか入手できなかったりと初見殺しな装備品も存在します。もし回収できればラッキーぐらいな気持ちでいいと思いますが,入手すると戦闘が楽になるようなものが多かったりします。
特筆すべき点として,装備品はジョブシステムとの相性もあります。詳細は割愛しますが,ジョブによって装備できない種類もあるので,注意が必要です。またジョブの特性を活かした装備構成も本作の醍醐味です。例えば,ナイトのジョブ特性「りょうてもち」は片手のみ武器を装備することになりますが,攻撃力が大幅に増加します。忍者のジョブ特性「にとうりゅう」は両手に武器を装備して2回攻撃します。このように多彩なジョブが装備のカスタマイズ性にも影響を与え,戦闘システムとしての奥深さを生んでいることがわかりますね。
体験談(※一部ネタバレあり)
FFを象徴する人気コンテンツ”ビッグブリッヂの死闘”
本作で最も有名なシーンといえば”ビッグブリッヂ”でしょう。ここで誕生したのが,楽曲「ビッグブリッヂの死闘」と大人気キャラ「ギルガメッシュ」です。
「ビッグブリッヂの死闘」はアップテンポなイントロから始まり,場面に合わせた疾走感や激しいロックな曲調が特徴的な楽曲です。これがFF屈指の人気で,4,8000票以上集めた「FF大投票企画」では音楽部門第2位,アレンジ曲も20曲以上リリースされるなど愛されています。本編のわずか十数分という間のBGMなのですが,ここまで人気になるとは思っていなかったでしょう。実際に生みの親の植松伸夫氏は「心外だ」と語っていたそうです。詳細についてはこちらの記事でも紹介させて頂いてますので,ぜひご覧ください。
「ギルガメッシュ」は本作で初登場ながらも,そのキャラクターから大人気となった敵キャラです。エクスデス親衛隊長として,ビッグブリッヂにてバッツらに立ちはだかりました。ところが戦闘中もおっちょこちょいな言動が目立つなど憎めないキャラクターが醸し出されています。本編ではその後も何度もバッツたちの前に現れ,語らいながら戦闘することになります。次第に愛着を覚えるようになり,印象に残ったという方が多いのでしょう。その人気から,「ビッグブリッジの死闘」と共にその後のシリーズに度々登場するようになりました。
FFを代表するコンテンツとなった理由は,本作をプレイしていただければわかると思います。個人的にはこの他にも好きな楽曲がたくさんあるので,興味を持っていただければ幸いです。
あまりにも有名になった”まほうけん・にとうりゅう・みだれうち”
ジョブ・装備品の組み合わせを追求した結果,あまりの強さに一世を風靡した戦闘スタイルがあります。それが「まほうけんにとうりゅうみだれうち」です。魔法剣士の「まほうけん」,忍者の「にとうりゅう」,そして狩人の「みだれうち」をまとめてセットすることで実現できるスタイルです。「にとうりゅう」により2回となった攻撃を「みだれうち」により4回行動すると…合計8回攻撃するわけです。これを魔法剣で相手の弱点属性を付与すると…。この戦闘スタイルの強さはシナリオ終盤になるほど際立ってきます。普通にプレイする分にはここまで必要ないかもですが,本作で登場する強大すぎる2体のボス相手にはこのぐらいは準備しないと太刀打ちできません。
ここでは「まほうけんにとうりゅうみだれうち」を最強セットのように紹介していますが,人によって最強セットは違うと思います。そんな組み合わせの自由度の高さこそ,本作のシステムの奥深さといえるでしょう。既プレイの皆さんはお気に入りの組み合わせはありますか??
様式美とも思える”初見殺し要素”
先述したように,本作の戦闘に関わるシステムは非常に作りこまれていて,カスタマイズ性が高いです。人によってはあまりの強さに戦闘に退屈してしまうようなパーティーが出来上がってしまいます。そんなプレイヤーを満足させるべく誕生した強大すぎる敵をご紹介します。その名は「オメガ」と「しんりゅう」。その後のFFシリーズでも”強さを象徴する名”として登場するほど有名なのでご存じの方もいるかもしれません。本編のダンジョン内に突然現れ,開始数ターンで全滅させられます。(余りにはやい全滅…。俺でなきゃ見逃しちゃうね。)
この両名はクリア後のやりこみ要素というような位置づけですが,ここまで露骨に表現されるようになったのは本作が初めてです。今ではやりこみ要素はFFシリーズおなじみになりました。本編以外にも楽しみが増えるのはプレイヤーとしてはやりがいがありますね。
まとめ
FINAL FANTASY Vは本格的なジョブシステムが特徴的で,それに応じるように敵キャラもユニークな戦術をとるようになっています。そのため戦闘に思い入れのある方も多いかもしれません。実際にこのジョブシステムはその後のシリーズにも踏襲されることになります。
またFFを代表するコンテンツを生んだ作品としても有名なタイトルです。楽曲やキャラクターだけでなく,やりこみ要素のお手本のような敵まで実装されています。プレイヤーの手腕が問われるタイトルですので,ぜひ自身の攻略法でクリアを目指してください!
- 進化した「ジョブシステム」がさらに戦術のカスタマイズ性を向上
- 個性的な敵キャラが増え,戦術も多様化
- FFを代表するコンテンツ(楽曲・キャラ・敵)が誕生