FINAL FANTASY IIIは1990年にファミリーコンピュータで発売されたシリーズ第3作品目です。今作がファミリーコンピュータで発売された最後のシリーズとなります。ファイナルファンタジーシリーズではおなじみのクリスタルをめぐるストーリーは『FFI』を彷彿とさせる内容となっています。加えて『FFI』から進化したジョブシステムが採用されるなど後のシリーズ継承されるシステムが取りそろえられました。
そして召喚獣が存在感を見せています。実はナンバリング最新作『FFXVI』にその名が登場するなど,その後のFFシリーズへ影響を与えています。黎明期を経て形成された”FFらしさ”を体験できます。
概要
FINAL FANTASY IIIは1990年に発売され,その後リメイク版は2008年にニンテンドー3DSにて発売されました。
『FFI』や『FFII』と比較して移植版まで間があったこともあり,未プレイの方も多いのではないのでしょうか?ファミコン版は約140万本を売り上げ,シリーズ初となるミリオンを達成しました。ファイナルファンタジーがRPG作品としての知名度を高めてきたことがわかりますね。
ストーリーでは「人の死」を連想させる場面がいくつかありますが裏話があります。実はディレクターを務めた坂口博信氏が自宅で火災に遭い,母親が亡くなる事故が起きてしまいました。坂口氏は「大切な人が死んでしまったときの,生き残った者の辛さをいやというほど味わいました。生き残った者のすべきことはなんなのか,そんなことをいろいろと考えるようになりました」と語っています。以降のシリーズでも「死」をテーマにした物語が描かれているようになっています。
主要人物
- 4人の光の戦士
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今作では『FFI』のように,4人の若者が主人公となる。山奥の村ウルで長老に育てられ,好奇心から足を踏み入れた洞窟で出会った風のクリスタルから啓示を受けることになる。ゲーム開始時に名前を変更できますが,ここではデフォルト名にて紹介します。
- ルーネス
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光の戦士の1人。好奇心旺盛で感情豊かな少年。前向きな性格で周囲からの信頼も厚い。軽口をたたきながらも正義感が強い。
- レフィア
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光の戦士の1人。鍛冶屋で育てられた少女だが,厳しい修業に耐えられず家出を繰り返している。根はやさしく,活発で意地っ張りな性格。カエルが嫌い。
- イングズ
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光の戦士の1人。サスーン城の青年兵士で,性格はルーネスと対照的。冷静で丁寧な言動が目立つ。レベルが上がった際にはキザなポーズをとるといった一面もある。
- アルクゥ
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光の戦士の1人。読書が好きな引っ込み思案な少年で,ルーネスとは幼馴染。気弱な性格だが,冒険を通じて勇敢で陽気な少年へと成長していく。
- ドーガ
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偉大なる大魔導士でウネ,ザンテと共に師のもとで学んだ。師から受け継いだ「強大な魔力」を発展させ,独自の魔法体系を生み出した。
- ウネ
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夢の世界の番人でドーガ,ザンテと共に師のもとで学んだ。師から「夢の世界」を託され,その後は番人として1000年に及ぶ長い眠りについている。
- 魔王ザンテ
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かつてドーガ,ウネと共に師のもとで学んだ。師から「人としての命」を受け継いだが,これを不服に思い土のクリスタルを利用して大地震を起こし,世界を混乱に陥れる。
ストーリー
ある時,世界を大地震が襲い,世界の調和を保つクリスタルは地中へと沈んでしまう。辺境の村にいた4人の若者は大地震によってできた洞窟へと探検に向かう。そこで風のクリスタルと出会い,啓示を受けた4人は光の戦士として,世界の調和を取り戻す冒険の旅に向かう。冒険のなかで大地震を起こしたのが魔王ザンテであること,またそのきっかけとなった出来事や経緯が解き明かされていく。
戦闘システム
おなじみのターン制バトル+追加要素
これまでのシリーズ同様ターン制のバトルになり,サイドビュー方式の構成になっています。隊列の概念も前作同様ですが,後列に下げても物理攻撃を与えられるようになりました。敵からのダメージは抑えられますが,与えるダメージも低下する仕様です。また仕様かどうか不明ですが,2,3番目のキャラクターが狙われやすい傾向があります。プレイすると実感しますが,この位置のキャラは後列推奨です。
そして本作から戦闘開始時に”バックアタック”が発生するようになっています。バックアタック時は画像のように敵味方の配置が逆になり,メッセージが表示されます。敵側が先制攻撃となるだけでなく,隊列が逆転してしまいます。場合によっては全滅必至となる展開ですので注意が必要ですね。
再調整された装備と魔法
装備品やアイテムに関しては前作から少し調整が入っています。武器には空・石化・火炎・冷気・HP吸収・回復・暗黒の計8種類の攻撃有効属性が存在します。弱点属性で攻撃するとダメージが増加しますが,耐性を持っている場合はダメージが減少します。また吸収属性の場合は敵を回復させてしまいます。うまく使い分けると攻略がグッと楽になりますね。そして防具に設定されていた重量の概念は廃止されました。
魔法はLv .1~Lv .8まであり,使用回数がレベルごとに設定されています。レベルが高くなるほど使用回数も少なくなります。同じレベルの魔法であっても,使用回数上限になると使えなくなります。戦闘時はバランスよく魔法を使い分けなければなりません。ちなみに魔法の対象でモンスターの種類ごとに選択できるようにもなりました。これは後のシリーズには採用されていません。
新たな魔法 ”召喚魔法”
本作から新たな魔法系統として”召喚魔法”が初登場しました。使用すると召喚獣が現れ,攻撃や回復,補助などさまざまな効果を発揮します。本作の召喚魔法は同じ名前であっても「白」「黒」「合体」の3種類の異なる効果で分類されています。「幻術師」は白か黒の召喚獣をランダムで呼び出し,「魔界幻士」および「賢者」は合体の召喚獣を呼び出します。召喚魔法は店で購入できますが,Lv .6以降の召喚魔法は召喚獣と戦って勝利しなければ購入できません。
召喚魔法 | Lv | 召喚獣 | 白 | 黒 | 合体 |
---|---|---|---|---|---|
エスケプ | 1 | チョコボ | 「スタコラにげた!」 (戦闘離脱) | 「なぐられた!」 (効果なし) | 「キック」 (敵単体にダメージ) |
アイスン | 2 | シヴァ | 「さいみんこうせん!」 (敵全体に睡眠) | 「つめたいしせんでこおりついた」 (敵単体にダメージ) | 「ダイアモンドダスト!」 (敵全体に氷ダメージ) |
スパルク | 3 | ラムウ | 「マインドブラスト!」 (敵全体に麻痺) | 「かみのいかづち」 (敵単体に雷ダメージ) | 「てんのいかり」 (敵全体に雷ダメージ) |
ヒートラ | 4 | イフリート | 「かいふくまほう」 (味方全体のHP回復) | 「いかりのほのお」 (敵単体に炎ダメージ) | 「じごくのかえん」 (敵全体に炎ダメージ) |
ハイパ | 5 | タイタン | 「ボコボコになぐった」 (敵単体にダメージ) | 「ガンガンにけりをいれた」 (敵単体にダメージ) | 「だいちをゆるがす!」 (敵全体に地ダメージ) |
カタスト | 6 | オーディン | 「ぜんいんにバリア!」 (味方全体にリフレク) | 「つるぎがてきをきりさいた!」 (敵単体にダメージ) | 「ざんてつけん!てきはぜんめつした!」 (敵を殲滅) |
リバイア | 7 | リバイアサン | 「せきかにらみ!」 (敵全体に石化) | 「きょだいなたつまきをおこした」 (敵全体に風ダメージ) | 「つなみをおこした」 (敵全体に雷ダメージ) |
バハムル | 8 | バハムート | 「オーラ!こうげきりょくがアップ」 (味方全体の攻撃回数上昇) | 「まっぷたつにきりさいた!」 (敵単体に即死) | 「メガフレア!」 (敵全体にダメージ) |
ブラッシュアップされた ”ジョブシステム”
『FFI』にも登場していた”ジョブシステム”がさらにブラッシュアップされました。シナリオ中に4つのクリスタルの輝きを取り戻すことになるのですが,各クリスタルからの恩恵を受けてジョブを入手することができます。全部で20種類以上のジョブが選択でき,入手したジョブはいつでもチェンジできます。ステータス成長や身につけられる装備品,そして使用できるアビリティなどさまざまです。
ジョブ | アビリティ |
---|---|
たまねぎ剣士(初期ジョブ) | なし |
戦士 | ふみこむ |
モンク | かまえる,かくとう |
白魔道士 | しろまほう(Lv .1~7) |
黒魔道士 | くろまほう(Lv. 1~7) |
赤魔道士 | しろまほう,くろまほう(Lv .1~4) |
狩人 | みだれうち |
ナイト | かばう,まもる |
シーフ | ぬすむ,とんずら,カギをあける |
学者 | しらべる,みやぶる,アイテムの知識 |
風水師 | ちけい |
竜騎士 | ジャンプ |
バイキング | ちょうはつ,ひきつける,瀕死時防御力アップ |
空手家 | ためる,かくとう,けり |
魔剣士 | あんこく,ぜんぎり |
吟遊詩人 | うたう,おどかす,おうえん |
幻術師 | しょうかん(白 or 黒) |
魔人 | くろまほう(Lv. 1~8) |
導師 | しろまほう(Lv .1~8) |
魔界幻士 | しょうかん(合体) |
賢者 | しろまほう,くろまほう,しょうかん |
忍者 | なげる |
そして各ジョブには熟練度が設定され,戦闘を通じて最大99まで成長します。成長するほどキャラクターのステータスが向上するシステムとなっています。
体験談(※一部ネタバレあり)
FFらしさが後世に引き継がれた
これまでのシリーズを踏襲して戦闘システムやストーリーの幅が広がりました。これらは後のFFシリーズへと引き継がれ,さらにブラッシュアップされています。ジョブシステムは『FFV』,デザイン等は『FFX』,ダンジョン名などは『FFT』とさまざまなシリーズに本作の要素を垣間見ることができます。クリスタルを主軸としたストーリー構成などもファイナルファンタジーらしさとして,その後もシリーズにも継承されています。なので本作をプレイしていただくと,「ファイナルファンタジー」というゲームの本懐を理解できるのではないでしょうか。
鬼畜で有名なラストダンジョン
本作である意味印象に残ったのはラストダンジョン「クリスタルタワー」と「闇の世界」でした。育成などを含め,戦闘システム面がかなり改善されたため,ゲーム難易度としては低めといえるでしょう。ただオリジナル版では,この2つのラストダンジョンが鬼畜なほど難しいことで有名です。途中で離脱することはできず,回復ポイントもセーブポイントもありません。長いうえに強敵ぞろいのダンジョンを2つも突破しなければならず,まさに苦行といえます。私個人としては,シリーズ中トップの難易度だと感じました。興味のある方はぜひオリジナル版をプレイしてみてください。
クリア後のやりこみ要素
本作のやりこみ要素として育成と裏ダンジョンが醍醐味でしょう。ジョブシステムの登場により,さまざまな育成方針を立てられるようになりました。なかでも最も有用なジョブは…なんとたまねぎ剣士なのです。初期ジョブかつステータスがほぼ上がらないとされているのになぜなのか。実は熟練度93以降になるとステータスが急成長し,99でステータス全てが99になります。大器晩成型すぎる…。
また3DS版,Android/iPhone版では裏ダンジョンへと挑戦することができます。そこで待ち受けるボスがFFおなじみのてつきょじんです。本作最強の敵でラスボスとは比べ物にならない強さを誇ります。なんと1ターン4回行動をとる上,状態異常,メテオと攻撃的です。HPが一定以下になると全体防御無視ダメージの”なぎはらい”を使用するようになります。育成はもちろんですが,しっかりと戦略立てて挑戦する必要がある強敵です。クリア後はぜひ撃破を目指してみてはいかがですか?
『FFXVI』との召喚獣のつながり
※この項目では『FFXVI』のネタバレを含みます
本作にて召喚獣が初登場したのですが,その影響が後世のシナリオにもしっかりと継承されていることがわかります。ナンバリング最新作『FFXVI』は召喚獣をテーマにしたタイトルですが,本作との関わりが見られます。最終決戦にてクライヴとアルテマが一騎打ちします。その際,各々がその身に宿した召喚獣の力を駆使して戦います。そこに本作の要素が見られました。
- アイスン―シヴァ
- スパクル―ラムウ
- ハイパ—タイタン
- バハムル—バハムート
- カタスト—オーディン
- ギガメス—ガルーダ
- タイクン—フェニックス
アルテマが使ってきたのはシリーズ最古にあたる本作の召喚魔法だったのです。ギガメスは「ガルーダ」というボスとして登場し,タイクンは登場していません。シリーズの始祖として対立構図が描かれたのは本作ファンにとっても嬉しい演出でしょう。
まとめ
FINAL FANTASY IIIは『FFI』がつくり上げた骨格に肉付けをしていったようなタイトルです。今やシナリオにも影響を及ぼす召喚獣の存在も本作から実装されました。加えてジョブを使い分けた戦術の展開はプレイヤーの自由度を高めてくれました。さまざまな面でファイナルファンタジーらしさを形成してくれたといえるでしょう。
本作の全体的なゲーム難易度はやや低めだと思います。ただオリジナル版はラストダンジョンのみ”鬼畜ゲー”となっています。腕に自信のある方はぜひオリジナル版をプレイしてみてほしいです。この難易度を当時の子供たちはクリアしていたのか…?
- FFシリーズおなじみのシステムが多数導入された(ジョブ・召喚獣)
- ブラッシュアップされたジョブシステムにより多彩な戦術がとれる
- オリジナル版のラストダンジョンの難易度は伝説級