FF零式は2011年に発売され,PSPやPS4版でプレイ可能なFF外伝作品です。作りこまれたシナリオはシリアスな場面が多く,それまでのシリーズとは一線を画したタイトルとして人気を博しています。
そんな本作は多数の登場人物や国家が複雑に交錯することで,シナリオを理解しきれなかった方もいらっしゃるかと思います。今回はシナリオで振り返るFF零式と題して,0組の最期について解説したいと思います。
※この記事はFF零式既プレイを前提として解説しています。
0組の登場と役目
0組は朱雀魔導院に所属する候補生のなかでも,特に優れた能力を持つ学生が集まったクラスです。朱雀の象徴である朱いマントの着用が許可されています。
0組のメンバー
0組の登場の前に,メンバーについて紹介しておきます。豪華声優陣が起用されたこともあって,非常に個性的なメンバー編成です。
主要メンバー
エース(CV. 梶裕貴)
年齢:16歳 | 身長:168 cm |
誕生日:土の月(7月)10日 | 使用武器:カード |
一見クールに見えるが,熱い一面も持っているためか無鉄砲な行動をとることがある。幼少期にヒナチョコボを助けたことがきっかけでチョコボ好きになった。成績優秀で思慮深い。
著者不明の書物「無名の書」において,一の座「受け取る力」を司る。
デュース(CV. 花澤香菜)
年齢:16歳 | 身長:158 cm |
誕生日:水の月(2月)8日 | 使用武器:笛 |
温厚で真面目な頑張り屋。誰に対しても心優しく丁寧な言葉遣いだが,口調に似合わず頑固な一面もある。いざという時は己を犠牲にすることも辞さないため,仲間からは「怒らせると怖い」と思われている。
著者不明の書物「無名の書」において,二の座「優しき力」を司る。
トレイ(CV. 中村悠一)
年齢:17歳 | 身長:184 cm |
誕生日:岩の月(3月)1日 | 使用武器:弓 |
冷静沈着で常に人の考えに理解を示して的確に助言する。成績優秀な0組の知恵袋的な存在。丁寧な口調だが長話なのが玉にキズ。弓の腕前は数キロ先の敵を正確に射抜くスペシャリスト。
著者不明の書物「無名の書」において,三の座「知の力」を司る。
ケイト(CV. 茅原実里)
年齢:16歳 | 身長:161 cm |
誕生日:氷の月(6月)9日 | 使用武器:魔装銃 |
負けず嫌いで,何事にも真っ向から立ち向かう勇敢な少女。裏表がなく,元気に突き進む性格。幼少のころから魔法が得意で,魔法弾が打てる特殊な魔法銃を操る。
著者不明の書物「無名の書」において,四の座「勇敢なる力」を司る。
シンク(CV. 豊崎愛生)
年齢:16歳 | 身長:163 cm |
誕生日:火の月(1月)12日 | 使用武器:メイス |
つかみ所がなく,のほほんとした口調で何をしでかすか分からない。一方で,勘が鋭く突然核心を突くところがあり,周囲を驚かせることもある。どうせならダメージが大きい方がいいという理由でメイスを使用している。
著者不明の書物「無名の書」において,五の座「純真なる力」を司る。
サイス(CV. 沢城みゆき)
年齢:16歳 | 身長:166 cm |
誕生日:巌の月(11月)13日 | 使用武器:大鎌 |
非常にドライで一匹狼気質の女戦士。自分にとっての善悪をしっかり持っている。好戦的な性格で一度恨みを持つと延々と根に持つタイプ。言動も過激で攻撃的だが,真実を突いた意見を述べることも。
著者不明の書物「無名の書」において,六の座「執着する力」を司る。
セブン(CV. 青木まゆこ)
年齢:17歳 | 身長:170 cm |
誕生日:熱の月(9月)23日 | 使用武器:鞭剣 |
物静かで落ち着きがあり,物事や状況を的確に判断できる。サバサバした性格で面倒見がよく,同性の下級生から絶大な人気がある。刃のついた鞭を操り戦う。
著者不明の書物「無名の書」において,七の座「認識する力」を司る。
エイト(CV. 入野自由)
年齢:16歳 | 身長:165 cm |
誕生日:嵐の月(8月)30日 | 使用武器:格闘 |
運動能力が高く,正義感の強い少年。状況を素早く判断する冷静さを持ち,自身の感情を抑えがちだが,実は負けず嫌いな一面がある。人の命を簡単に奪う武器を嫌い,己の拳で戦う。
著者不明の書物「無名の書」において,八の座「冷静なる力」を司る。
ナイン(CV. 小野大輔)
年齢:17歳 | 身長:185 cm |
誕生日:氷の月(2月)13日 | 使用武器:槍 |
乱暴な言動が目立つ0組の問題児。常に白黒はっきり付けないと気が済まない性格で言葉遣いが荒い。学業の成績は底辺だが,行動力はずば抜けて高い。
著者不明の書物「無名の書」において,九の座「行動する力」を司る。
ジャック(CV. 鈴村健一)
年齢:16歳 | 身長:182 cm |
誕生日:嵐の月(8月)17日 | 使用武器:刀 |
のんびりした口調で0組一のお調子者。いつも笑顔でポジティブ思考だが,本質はストイックで道化に徹して場を和ませている。軽口をたたくため,励ましの言葉が軽く見えてしまうことも。
著者不明の書物「無名の書」において,十の座「無知なる力」を司る。
クイーン(CV. 小清水亜美)
年齢:17歳 | 身長:165 cm |
誕生日:火の月(1月)24日 | 使用武器:ロングソード |
知識豊富で冷静な才女。特に魔法の知識に富み,魔法錬成に力を入れている。戦闘時に危機状態に陥ると,普段の冷静さを失い豹変する。自身の性格のように真っ直ぐな剣を扱う。
著者不明の書物「無名の書」において,十一の座「賢き力」を司る。
キング(CV. 杉田智和)
年齢:17歳 | 身長:187 cm |
誕生日:空の月(12月)7日 | 使用武器:二丁拳銃 |
寡黙で冷静かつ行動力のある不言実行タイプ。思考の切り替えが早く,合理的だという理由から二丁拳銃を選んだ。直情的で一本気なナインとは対照的だがなぜかウマが合うらしい。
著者不明の書物「無名の書」において,十二の座「決断する力」を司る。
マキナ・クナギリ(CV. 神谷浩史)
年齢:17歳 | 身長:175 cm |
0組の配属前:2組 | 使用武器:ボルトレイピア |
2組から0組に配属された候補生でレムの幼馴染。心優しい青年で朱雀でも上位の実力者として知られている。故郷の村はモルボル変異種の疫病が蔓延してしまったことで,感染拡大を阻止するためにミリテス皇国によって焼き払われた。最終章では,偶然出会った白虎のルシ・クンミから力を継承してルシとなり,朱雀のルシであったレムと衝突して自らの手でレムを倒した。
著者不明の書物「無名の書」において,失われた座の一つ「恐れ」を司る。
レム・トキミヤ(CV. 白石涼子)
年齢:17歳 | 身長:160 cm |
0組の配属前:7組 | 使用武器:ダガー |
慈愛にあふれ,誰にでも親身に接する優しい女性。魔法が得意で0組の配属前は回復専門クラスの7組だった。幼い頃から不治の病にかかっており,幼馴染であるマキナにも病については伝えていない。最終章では,0組に代わって朱雀のルシとなり,白虎のルシであったマキナと衝突して敗北した。
著者不明の書物「無名の書」において,失われた座の一つ「愛」を司る。
サブメンバー
ティス(CV. 寺門仁美)
著者不明の書物「無名の書」において,失われた座の一つ「老い」を司る。
欠番となっている0組の十の座を冠しており,繰り返される実験のなかでジョーカーと共に放逐された。ジョーカーとは繰り返され続ける輪廻を生き,そのなかで自然と惹かれ合った。本名はトオノ・マホロハ。
ジョーカー(CV. 内山昂輝)
著者不明の書物「無名の書」において,失われた座の一つ「苦しみ」を司る。
ティスと同様,実験のために用意され放逐された魂。輪廻のなかで生きることを強いられ,あらゆる苦を知り絶望の淵にいた。ティスと出会ったことで安定し,いつしか惹かれ合うようになった。本名はリーン・ハンぺルマン。
0組の戦線投入
物語序盤の「魔導院解放作戦」にて登場しますが,それまでは100年以上もの間その姿を現していませんでした。魔導院の学生の間では「朱雀の七不思議」「幻の朱」と呼ばれていました。
そんな0組が招集されたのは,朱雀が白虎からの侵攻に対抗するためです。
ミリテス皇国(白虎)は朱雀領に対して侵攻しはじめ,大戦が開幕します。機械兵器に対して朱雀は魔法や軍神で応戦し,白虎戦力を圧倒していました。
ところがミリテス皇国のルシ・クンミによるクリスタルジャマーが発動し,朱雀クリスタルの力が封じられてしまいます。これにより朱雀軍は魔法が使えなくなり,あっという間に形勢逆転されてしまいます。
ミリテス皇国からは武装解除とクリスタルの引き渡しなど,朱雀は事実上の降伏を要求されます。この状況を打破するためには”朱雀クリスタルの力を必要としない戦力”が要るわけです。
0組の戦力は3人で一個大隊
0組はクリスタルジャマーの影響を受けずに,魔法を使用することができます。極秘任務として,朱雀クリスタルの力を必要としない0組が戦線に投入されたわけです。
そして0組は圧倒的な戦闘能力を誇ります。
- 0組3人で一個大隊(300~1,000人程度)と同等レベルの戦力
- 生物の魂である「ファントマ」を糧として魔力に還元・強化できる
- 軍神(召喚獣)の使用が自由に認められている
0組が全員揃えば旅団クラスを相手取ることができることから,周辺国は0組を「朱の魔人」と呼んでいます。「魔導院解放作戦」にて戦線投入されると,戦況は一気に覆ります。クリスタルジャマーを破壊し,ルシ・クンミも退けることに成功します。
こうして0組は表舞台で活躍することになり,激動の時代のなか朱雀の運命を導く大きな役目を担うことになります。ですが,その実態は「神による実験道具」として0組は利用されていました。詳細は後述します。
0組の関係者
0組は朱雀のなかでも少数精鋭部隊として極秘任務を与えられることが多いです。そんな0組を支える関係者についても簡単に紹介しておきます。
アレシア・アルラシア(CV. 田中敦子)
年齢:?? | 身長:165 cm |
魔法局局長 | 0組の親変わり |
魔法の改良や開発を担う魔法局局長であり,0組からは「マザー」と呼ばれ慕われている。常に煙管を持ち歩き,誰に対しても敬語を使わない慇懃無礼な人物。0組を子どものように可愛がっているものの,編入性のマキナとレムには冷たい反応を見せる。
0組が死亡した際に復活させてくれたり,HPを回復してくれたりと手厚くサポートしてくれる。その正体は神に連なる上位存在である。
クラサメ・スサヤ(CV. 櫻井孝宏)
年齢:26歳 | 身長:177 cm |
元朱雀四天王 | 使用武器:刀 |
0組の指揮隊長であり,従者としてトンベリを連れている。約10年前には朱雀四天王の元メンバーで氷剣の死神と呼ばれ恐れられていた。現役時代と比べて魔力・体力は衰えたと述べているが,初対面の0組3人を相手に軽く捌いてみせるなど強さは健在。
ぽっと出だったこともあってか,朱雀のなかでもよく思われていない0組の担任だったためか,秘匿大軍神召喚の任に就くことになる。ここで自らの魔力を全て放出して絶命することとなった。
カヅサ・フタヒト(CV. 石田彰)
年齢:26歳 | 身長:182 cm |
配属:元11組 | 武装第六研究所の研究主任 |
武装第六研究所の研究主任のひとり。性格は「変態」として候補生の間でも有名だったそう。男女問わず役職問わず,人をさらっては研究に利用している。
クラサメ,エミナとは同期であり交友関係がある。カヅサの研究はクラサメの蘇生のために行っていたことが後に判明する。
エミナ・ハナハル(CV. 田中理恵)
年齢:25歳 | 身長:168 cm |
配属:元6組 | 候補生専属の指揮隊長 |
文武両道で華やかな容姿,明るく気さくな性格。候補生専属の指揮隊長だが受け持っている組はない。男女ともに人気が高く,水着コレクターという意外な一面を持っている。
クラサメ,カヅサとは同期であり交友関係がある。魔法局の一部から白虎のスパイ疑惑をかけられ,0組は透明化する魔法「スケル」を使って調査する任務を担う。
アリア・ルリカラ(CV. 野中藍)
年齢:15歳 | 身長:145 cm |
0組の従卒 |
普段は大人しく小さな声で話している0組の従卒。無言で手際よく準備するため,他の従卒たちから憧れられている。ミリテス皇国との休戦時に普段の話し方を頼んだところ,独特の口調の田舎っぺ口調で母親から口利きを禁止されていたそう。
休戦中のある事件の濡れ衣を着せられた0組に危機を伝えに来たところ,皇国兵に銃撃されてしまう。その後ミリテス皇国のカトル准将に命を救われ,その後も敵国領にて監視下におかれることになる。
しかしカトル准将の死によって監視下となっていた記憶が消され,ミリテス皇国の兵士に銃殺された。
ナギ・ミナツチ(CV. 森久保祥太郎)
年齢:19歳 | 身長:178 cm |
所属クラス:9組 | 0組と他部署の伝令役 |
軽い口調でお調子者に見えるが,表向きの姿として見せている。基本的に0組に対して隠し事をしたくないらしく,後に諜報部である9組から内偵として0組に配属されたと話している。
9組では暗殺,裏切り者の始末といった汚れ仕事「クリムゾンミッション」を受け持ち,そんな自分を嫌ってか明るく振舞うように努めている。同じクリムゾンミッションをこなす0組には仲間意識があるのかもしれない。
リィド・ウルク(CV. 小林正寛)
年齢:25歳 | 身長:220 cm |
所属クラス:5組 | 玄武と朱雀のハーフ |
5組に所属する大柄の候補生。力は人を守るためにあるという思想を持ち,誰かのために行動している。鍛錬を欠かさず,ピークを過ぎた25歳になっても候補生であり続けている。
母親が玄武人であり,祖父が玄武の重臣であるエンキドゥであることがストーリーで判明する。戦場で姿を見ることはないが,パイルバンカーを武器としている。
カルラ・アヤツギ(CV. 平野綾)
年齢:17歳 | 身長:166 cm |
所属クラス:1組 | 自称「炎の商売人」 |
候補生としては成績優秀な優等生だが,金銭への執着が異常で独自の商売を学内で展開している。「カルラによる性格矯正講座」を一講座25万ギルで勧めたり,心の栄養ドリンク(ただのエーテル)を一つ7万ギルで売ろうとしたり,その商売手法はなかなか強烈。
本来,魔導院での商売は禁止されているが教官の前では猫を被っているためにお咎めなし。戦闘する姿は見られないが,長めの銃(アサルトライフルのようなもの)を武器として使用する。
ムツキ・チハラノ(CV. 松本まりか)
年齢:15歳 | 身長:146 cm |
所属クラス:12組 | 発明の天才 |
被害妄想が激しく,「変わり者クラス」の12組に配属されている候補生。他人は害をもたらすものと思い込み,常に本物の爆弾を持ち歩いている。話しかけると「ボクをいじめに来たんだな!」というボクっ子。
両親は優秀な科学者だったためか,発明の天才。本人に自覚はないものの,その技術を活かして武装研に請われて協力している。
クオン・ヨバツ(CV. 置鮎龍太郎)
年齢:18歳 | 身長:188 cm |
所属クラス:3組 | 無類の本好き |
魔法知識を豊富に持っており,新種の魔法や究極の魔法を追い求めている。その情熱は犯罪を犯しても追及する始末。他人には冷たい態度をとるが,魔法や自分に関することでは話が長くなりがち。
無類の本が好きで全100巻ある辞書を6周していたり,並々ならぬ愛情がある。0組にしか扱えないファントマについても独自に調べ上げるなど知識・情報収集能力に長けている。
0組の最期
オリエンス統一
ルブルムはミリテス・コンコルディアの連合国軍によって侵攻を受ける事態に追い込まれます。圧倒的に不利な状況に対して,ルブルムは朱雀のルシ・セツナ卿とを中心とした部隊を編成。大勢の候補生の魔力を犠牲として秘匿大軍神アレキサンダーを召喚します。
アレキサンダーの聖なる光がわずか18分で敵国軍隊を全て薙ぎ払い,ミリテス皇国部隊を退けました。
- 皇国軍損害
-
- 飛空艇:損失 8,大破 6,小破 7
- 魔導アーマー:519機
- 各種車両:974台
- 戦死者:184,307名
多大な犠牲を払いながらも,ルブルムは疲弊した両国を制圧してオリエンス統一を果たしました。
オリエンスの世界には「オリエンス統一を成した者こそがアギトではないか」とする救世主伝説のような認識が広まっていました。なのでルブルムが統一を果たしたことで,世界は平和になるかと思われていました。
フィニスの刻
ところが魔導院ペリシティリウム朱雀の後方に謎の神殿「万魔殿」が出現し,「ルルサス」と呼ばれる軍勢によって人が蹂躙され始めたのです。人々はオリエンスの伝承にある災厄「フィニスの刻」が訪れたと絶望します。
ルルサスの攻撃は人が持つ魂「ファントマ」そのものに致命傷を与えます。なので治癒魔法による回復ができません。加えてルルサスは普通に倒してもすぐに復活してしまい,完全に倒すためにはファントマを回収する必要があります。ですがファントマを扱えるのは0組だけなので,0組以外の人は倒すことができず一方的に蹂躙されるわけです。
どうやって生き抜くか
フィニスの刻が訪れ,朱雀の指揮系統は完全崩壊しました。これまで命令を受けて任務にあたっていた0組は何をすればいいのか分からなくなってしまいます。0組は教室にてマザーと出会い,助言を求めます。
「あなたたちはただクリスタルの意志に従って,忠実に命令を全うして生きてきただけ。でも人はどう生き,どう死ぬかを選ぶことができる。最後は自分たちで選びなさい。」
その後,マザーも消息を絶ってしまいます。さらにミリテス皇国の総帥シドが万魔殿に入ったという情報も入りました。後のストーリーで,シドがある者によって万魔殿に誘われていたことがわかります。
どうすればこの状況を打破できるか,0組は何をすべきか悩みます。そのときクイーン,トレイ,エースがある書物の一説をそらんじます。
彼の地,選ばれし者のみが入ることを許される,
著者不明 『無名の書』より
その者,天理天道に触れ,
真なるものを手にするだろう
それは理外の理,アギトへの理
それは力,アギトへ至る王権
そして,賢者は語る
全てに於いて意味があり
凡てに於いて忌みが明ける
選択せよ。理か,王なる力か
我はなろう,アギトへと……
鐘を鳴らそう。世界を震わせ伝えよう……
9と9が9を迎えし時,識なる底,脈動せし……。
そして始まりの封が切れし時,雷のごとき声音が響かん
我ら来たれり……と
現状と似通った点が多く,ここから0組は何をすべきかを議論します。「万魔殿が選ばれた者だけが入れる場所だとすればシドはアギトになったのでは?」「万魔殿の最奥には審判者がいて,それを倒せばいいのでは?」こうして0組は万魔殿へと向かい,「審判者を倒す」という結論を選択したのです。
クリスタルとルシ
クリスタル
クリスタルはオリエンス4か国に存在し,大いなる力の源としてオリエンスに暮らす人々にとって欠かせないものです。特に朱雀民は信仰が強く,相手の幸運を祈る際には「クリスタルの加護あれ」というほど。
4か国ともクリスタルを基盤とした国づくりを行っているため,政治的・軍事的な影響も大きいのです。クリスタルは「ペリシティリウム」と呼ばれる施設にて保護・管理され,その位置づけは各国で異なります。(単にエネルギー供給機関として扱う場合も。)
そしてクリスタルは死者の記憶を忘れさせるという影響を与えます。といっても,完全に記憶が消失するわけではなく,「こんな人がいた」ぐらいの認識レベルになることもあります。
「悲しみを忘れさせる」という意味では恩恵かもしれませんが,「大切な人の記憶を失う」ことにもなります。そのためマキナは「レムの死」に対する過度な恐怖心を抱いてしまい,レムを守る力を得るべく白虎のルシとなることに。
そして朱雀クリスタルは自己防衛のために新たなルシを求めるなか,0組にルシになるよう打診します(最終章の分岐ストーリー)。ここで0組がルシにならなかったことで,レムを朱雀のルシとしたのでした。
ルシ
クリスタルは自身を守るための代行者として,ルシを選出します。ルシは特別な使命と力,不老を授かり,与えられた使命を全うします。ただし,ルシとなった人間は意思や感情が次第に消失して人間性が欠落してしまいます。
FF零式のルシは「甲型」と「乙型」に区分されます。以下に特徴と該当者を紹介します。
圧倒的な戦闘能力を持ち,扱う能力に差異はあれど基本的な身体能力や攻撃能力が大幅に強化されている。
朱雀:シュユ,レム 白虎:ニンブス 玄武:ギルガメッシュ 蒼龍:ソウリュウ,ホシヒメ
所属国の性質(機械や召喚獣など)を反映した特殊能力に長けている。身体能力は甲型に及ばずとも,かなり強化されている。
朱雀:セツナ 白虎:クンミ,マキナ 玄武:アトラ 蒼龍:アンドリア
ルシになった者はその使命を果たすとクリスタルと化して昇華し,クリスタルの意思を外れた者はシガイと化してモンスターに変貌してしまうのです。ちなみに,ルシとはいえ不死ではないので致命傷を受ければ死亡してしまいます。
0組の選択
万魔殿へと向かうためにはルシの手助けが必要でした。しかし朱雀のルシはルルサスとの戦闘で行方不明となってしまっていました。
そのとき蒼龍のルシ・ホシヒメが「未来にかけてみたい」と言い,万魔殿まで運んでくれたのです。しかし万魔殿の最奥にいるルルサスのルシたる審判者によって殺されてしまいました。
また万魔殿で,0組はクリスタルと化したマキナとレムを発見します。マキナは白虎のルシとして,レムは朱雀のルシとして互いに衝突し,マキナは自らの手でレムを殺してしまったのです。そして白虎のルシとしての使命を果たして昇華したのでした。
審判者への挑戦
万魔殿の最奥へと向かうなか,審判者の試練を強制され0組は満身創痍でした。0組は審判者の圧倒的な力の前に手も足も出ません。力尽きかけたとき,クリスタルと化したマキナとレムの想いが0組に力を与えたのです。2人の力を借りて0組はなんとか審判者を倒したのです。
戦いを終えて
0組は度重なる戦いで瀕死でした。魔導院の教室に戻り,死を迎える恐怖に脅える12人。ですが戦いを終えたことで,新しい未来について想像し,語り合っているうちに0組は少しずつ笑顔を取り戻したのです。
審判者が倒された後,アレシアの力でマキナとレムはクリスタルから解放されました。2人が魔導院の教室へ駆け戻ると,そこには互いに手をつなぎ眠るように息絶えた0組の姿が。そばには互いの武器を組み合わせてつくった支柱に,0組のマントを結んでつくった朱雀の旗が立てられていました。
目の当たりにしたマキナとレムはしばらく泣いていました。死者の記憶を失うこの世界で,命を賭して戦った0組のことを覚えているのはマキナとレムだけでした。
神による実験場
ここまでの解説を見て,ところどころ疑問を感じる部分があった方もいると思います。ここからはシナリオの中核について解説したいと思います。
背景となる神話「ファブラ・ノヴァ・クリスタリス」
本作はクリスタルと神々にまつわる神話「ファブラ・ノヴァ・クリスタリス ファイナルファンタジー(FNCFF)」という世界観に基づいています。これは『FF13』,『FF15』,『FF零式』に共通する世界観で,いずれも共通のキーワードが登場します。(当初はこの3部作まとめて『FF13』としたプロジェクトでした。)
この神話の大前提として,次の舞台背景が紹介されています。
全能神ブーニベルゼは母ムインを倒して「可視世界」を手にするが,その世界が有限である(生物に寿命がある)ことに気づく。つまり,この世界はすべてが滅びる運命にあると気づくのだった。
これは母ムインが残した呪いだと考え,ブーニベルゼはムインがいるとされる「不可視世界」へと至る道を探すことに。そこでブーニベルゼは「不可視世界」の探索のために三体の神を生み出して使命を与え,自身はその間クリスタルと化して眠りについた。
- ファルシ=パルス:世界の開拓,「不可視世界」の扉を探す
- ファルシ=リンゼ:ブーニベルゼの守護者,世界の終わりを知らせる
- ファルシ=エトロ:誤ってムインに似せて造ったため,何も力を与えなかった
パルスは世界を開拓するために,リンゼは世界を守護するために,それぞれファルシとルシを生み出していく。一方エトロは何の力も与えられず,自身の無力さを嘆いて自らを引き裂き「不可視世界」に下った。このときに飛び散った血から人間が生み出された。
「不可視世界」にたどり着いたエトロはムインと出会うが,ムインは既に混沌に飲み込まれかけていた。ムインはエトロに「世界の均衡を崩すな」と説いて消滅した。エトロにはその言葉の意味がわからなかった。
ブーニベルゼが恐れた「可視世界」の消滅は呪いではなく運命であり,世界の総和は定められていて「可視世界」と「不可視世界」で分け合っている。その均衡が崩れれば,やがて世界は崩壊してしまうのです。
いつしか人間は寿命を迎えるとエトロの堕ちた「不可視世界」に来るようになった。孤独だったエトロは生まれて死ぬだけの人間に親近感を覚え,「可視世界」にいる人間に混沌を与えるように。人は自身の中にある混沌を”こころ”と呼んで大切にするようになった。
ブーニベルゼが治める「可視世界」で人はこころという「不可視世界」の産物を抱えることで,世界の均衡はかろうじて保たれている状態となっていた。やがて人間は三体の神をこう崇めた。
- パルス:支配者
- リンゼ:守護者
- エトロ:死神
そしてブーニベルゼは「不可視世界」を見つけ出したという”永遠が終わるその日”まで眠り続けている。
”オリエンス”という実験場
パルスはの使命は世界の開拓と「不可視世界」への扉を探すことです。そのためパルスは新たなファルシを生み出し,そのファルシがそれぞれ世界をつくりだします。こうして互いに干渉することはないものの,同じ神話を持つ複数の世界が誕生するのです。FF零式における”オリエンス”もそのひとつというわけです(画像左)。
FF零式の世界において「不可視世界」への扉を探すための実験が行われていました。その実験を行っていたのがアレシアです。彼女はパルスに連なる女性体のファルシというわけです。
そしてもう一人,オリエンスに干渉していた者が存在します。それは物語終盤にちらっと現れる名前のない甲冑のファルシです。フィニスの刻に現出したルルサスたちのリーダーにあたります。彼はリンゼに連なるファルシですが,パルスに協力する形で「不可視世界」への扉を探すためにファルシをつくりだしています。
この二人のファルシの「不可視世界」へのアプローチ法は異なります。
- アレシア:魂を育み,強く煌めく人の魂がエトロから迎えられ,「不可視世界」の扉が開かれることを期待
- 甲冑のファルシ:大地を血に染め人を滅ぼし,魂を一斉に送ることで「不可視世界」の扉をこじ開ける
アレシアは6億回にも及ぶ実験を繰り返す中で,ある考えにたどり着きます。それが「12の要素」です(画像右)。当初は16の要素が必要と思われていましたが,繰り返される実験のなかで4つの座が放逐されました。アレシアはこの12の要素を持つ人の魂を育てていくことにします。
魂の変異とフィニスの刻
アレシアは12人の魂を育てるために死後も輪廻を繰り返させ,魂を変異させていきます(画像左)。ですが変異しすぎた魂はエトロのもとに帰らなくなってしまいます。変異しすぎると人を超えた存在となってしまい,その終着点がルルサスだと思われます。
変異する魂が輪廻できる限界がおよそ1,000年なので,そのたびに実験(世界)をやり直す必要があります(画像右)。この世界をやり直すタイミングが”フィニス”であると思われます。
- アレシアのやりたいこと
-
フィニスのタイミングでアギト(「不可視世界」の扉を開くもの)になれたかどうかを審判する
- 甲冑のファルシがやりたいこと
-
世界をリセットするタイミングで人類を皆殺しにして「不可視世界」の扉をこじ開ける
アレシアのアプローチでは1,000年かけてあらゆる状況,可能性を試行錯誤して魂を高める必要があります。そのためにどのような歴史をつくるか綿密に考えなければなりません。その方針を記した計画書のようなものが「アカシャの書」だと思われます。
アカシャの書とは
0組がフィニスの刻を生き抜く道しるべにもなった「アカシャの書」ですが,複数の人物によって書かれているとされています。これらを編纂して著作されたものが不明なことから無名の書と呼ばれています。内容は既に紹介した通り,本編では14章7節がクイーン,トレイ,エースにそらんじられています。
アレシアはアカシャの書に従って,歴史を進行・修正するために4つのクリスタル(ファルシ)をつくります。イレギュラーに対してはクリスタルがルシをつくり,使命を与えてアカシャの書に従うよう軌道修正します。
アカシャの書の通りに歴史が進んでフィニスの刻を迎えるとルルサスとルシである審判者が現れます(厳密には選ばれます)。審判者の最後の審判でアギト(「不可視世界」への扉を開くもの)が現れなければ,ルルサスが世界を滅ぼします。アレシアにしても甲冑のファルシにしても,「不可視世界」の扉を開けるという意味では利害が一致しているわけです。
神の思惑
実験方針を記したアカシャの書ですが,最後の1ページが書かれていません。ここで言う最後の1ページは世界をリセットする時,すなわちフィニスの刻だと思われます。最後だけが空白になっているのは,アレシアが人間の可能性に賭けているためです。
パルスやリンゼといった神々は使命を持って生まれ,どう生きるかが決められています。ただエトロだけは使命を与えられていません(後に使命を与えられます)。そしてエトロから生まれた人間も使命を持っていません。つまり,人間だけがどう生きるかを自分で決めることができます。
アレシアは人間の持つ無限の可能性が新たな道をつくることができると考え,最後の1ページを人間(0組)の可能性に賭けたのです。
まとめ
今回は0組に関わる舞台裏などを解説しました。FF零式は神による実験が舞台となっていました。0組は神の使命を果たすために利用されていたわけです。6億回も輪廻し,最後にはマキナとレム以外には覚えられることもなく,0組は全員死亡してしまうというバットエンドです。
戦争を舞台としていたこともあり,「死」がテーマとなったことで作品に重厚感が生まれたのは間違いないでしょう。シリーズのなかでも強いメッセージ性を持ったことで人気をタイトルとなりました。
ちなみに,FF零式のタイトルロゴやオープニングで登場する人物はパルスとリンゼと思われ,彼らが見つめる光がFF零式の世界(オリエンス)だと思われます。
改めて興味を持った方は,ぜひプレイしなおしてみてください。よりシナリオを楽しめると思いますよ。ここまでご覧いただき,ありがとうございました。